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講習会用ロボットの製作・オープン大会参戦の理由

講習会用ロボットの製作

2007年にRCJに出会って、自然とロボット教室で指導を行う様になりました。

募集を行ってレスキューライン短期集中講座を開く事となり、講習会用のロボットを用意する必要を感じました。

TJ3はロボットを手軽に始めてもらえる様に1万円を切る販売価格を目指した製品ですのでレゴマインドストームなどの高額なスターターキットの様に一通りの必要センサが予めセットされている訳ではありません。

”手軽にロボットを手にしたけれど、競技参加には敷居が高い(何を揃えれば良いか分からない)”とならない為に必要最小限のセンサを追加した講習会用ロボットが必要と考えています。(現在もRCJが盛んな地域では講習会用ロボットを準備して裾野を広げる努力をされています)

ロボット教室ではTJ3を用いていたのですが、ラインセンサ1個で競技に挑むのは無理があります。

ラインをセンサ2個で挟む構造にするとかの最低限のバージョンアップが必要です。

ロボット作りに大人が介入する事ができませんから、講習会でラインセンサの性質を理解する為の実験装置を作ってセンサの挙動をプレゼンしたり、センサが2個必要な理由を理解した上で、ロボットをセンサ2個仕様に組み替えて貰う形式にしました。

傾斜路での前輪駆動・後輪駆動の挙動を観測してもらって、車両設計の基礎を解説し、4輪駆動がレスキューラインに適していることの理解を得て、4輪駆動に組み替えを行う感じの6回講習となりました。

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2011年講習会用試作機(なぜか完成品の写真が残ってない)

この講習会用ロボットはラインセンサなど追加したセンサは最適な位置をあえて外しています。

TJ3の特徴であるユニバーサルな穴を利用してセンサ位置を前後したり傾けたりはロボカッパー自身でハードとプログラムの相関関係を突き詰めていく事を前提にしています。

 

 

オープン大会に参戦する理由について

OB・OG・おやじ参加の枠が準備されているオープン大会があります。

大人の参加には理由は色々あると思います。

特にOB・OGの継続的なロボカップジュニアへの参画を促す意味合いは大きいです。

オープン大会で同窓会的に盛り上がっている”元ロゴカッパー”の姿を見るのは良いものです。

”おやじ”の参加は、実際にロボット製作に携わる事によって、子供たちへの指導力の向上を図ることが期待されています。

個人的には以下の目的で臨んでいます。

〇風評の是正

〇多様性の勧め

〇センサの使い方のお手本

〇理にかなった(数学・物理に則った設計)作り

 

2014年モデル

 最初に競技用に1台まるまる設計製作(キットの改造ではなく)した最初の機体です。

沖縄サマーキャンプでの講習会を体験型にしたくて、製作した630g・単4NiMH×4本・3軸オムニ仕様のロボットです。

”見るからに弱そう”なのがコンセプトで直径180mmにも収まる小さなロボットです。

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この機体で参加チームの力自慢ロボット(オープン4軸オムニロボット)達に押し勝った上で”何でこのロボットが押し合いに強いのかについて解説しました。

理にかなった(数学・物理に則った設計)作り

〇オムニシステムの効率

〇車両設計の基礎(荷重移動・重心)

 

2015・2016年モデル

おやじ参加ができる大会へ向けて製作した最初の機体です。

レギュレーションで”難しい加工を加えず、なるべく市販の部品をそのまま使用する事”になっていましたので、タミヤのトラック&ホイールで2軸駆動ながら安定性を向上して、プラスチックギヤでタイヤを挟んだシンプルドリブラ、ダイセン電子工業さんの反射型パルスボールセンサ2個と方位センサを載せました。

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重量:770g 7.2V 1200mAh NiMHバッテリー使用

〇多様性の勧め

ドリブラー活用を中心にした多彩なシュート攻撃

 ・遠心力シュート(いわゆるマカオシュート)

 ・ローター反転シュート

 ・バックスピンシュート

センサの使い方のお手本

〇反射型パルスボールセンサ2個を用いた比例制御

〇2輪駆動・3輪・4輪オムニ駆動の特徴

理にかなった(数学・物理に則った設計)作り

〇履帯が外れない構造(直ぐに外れるイメージがあると思います)

〇駆動輪配置による過負荷防止

 

2017モデル

幅広く”ロボット面白そう!”と思って貰えるように動画配信を前提に、車載カメラ搭載ロボットとして設計しました。

ドリブラーは”みぶろや”さん(ロボット教室の向かいにある模型屋さん)で入手できる部品を意図してタミヤ製遊星ギヤを用いました。

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重量:車載カメラ込み980g 7.2V 1200mAh NiMHバッテリー使用

 

風評の是正

〇ダイセン電子さんのカラーファインダー

サッカーのゴールが色分けされてカラーセンサでゴールを判別できれば確実なシュートが打てる状況になった2010年に発売された長距離ピンポイントカラーセンサが”カラーファインダー”です。

発売当初は色々インプレッションの記事が上がって話題になっていた様ですが、次年度の大会で”カラーファインダー使ってたロボットあったけど弱かった”と言う感じのネガティブ評価記事を境に姿を消しました。

実際には2m以上離れた距離からゴールを正確に検知する性能があり、使いこなしていないだけだと分かったのでOYA-G2017モデルはTJ3を4輪駆動にして後ろ向きにカラーファインダーを搭載しました(I2C接続・C-CODEのRGB取得関数使用)。

この年まではロボットキットに毛が生えた程度でもセンサの仕組みを理解して再現性の高いプログラムを作りこんだら充分戦えることを伝えたかったのでTJ3であることが分かる範疇で手を加えてる事にこだわっています。

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この動画は青色ゴールと同系色のランドマーク(過去にはこんな意味不明の試みがありました)にシュートしたところです。小さなランドマークを的確に検出しているのが分かります(子画面の車載カメラ側の方が分かりやすいと思います)。

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この動画はゴールシーンを集めてあります。

カラーファインダーの”長距離ピンポイント検出性能”で相手ロボットに塞がれたゴールでもオープンスーペスを見つけてシュートしている事がわかると思います。

2018年モデル

この年からArduino搭載ロボットにしました。

PixyCamにバックミラーを組み合わせた前後方位カメラ搭載ロボットです。

水平方向の視野制限をかけた超音波センサをサーボモータで120°回転させてレーダーを作ってみました。

サイドアウトしたボールを積極的に取りに行く戦術は2015モデルからの踏襲ですが、Arduinoのコンパレータ割込みを用いてライン検出ミスをゼロにした事でダイナミックに外にあるボールを取りに行くチューニングがされています。

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多用性の勧め

〇バックミラー型前後方位カメラ

〇超音波レーダー

〇コンパレータ割込み(ハードウエアによるライン判定)

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コンパレータ割込みライン検出・バックミラーでゴールを狙ってシュート

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超音波レーダー:ゴール際などで内外判断ミスをしない工夫、センサ1個のプロット

 

2019モデル

この年にレーザー加工機を導入し、部品の切り出し時間が桁違いに速くなった為に、フォワード機とキーパー機の2台製作する事に成功しました(例年なら大会前日or当日移動の車の中でコーディング・良い子はマネしないように!)。

フォワード機はブロック大会でエキシビションマッチを行った際、ブロック大会優勝チームがジャパンオープンを終えるまで動画公開しない約束になってますのでキーパー機のみ紹介します。

オムニシステム、2軸駆動以外の駆動方式として4WSを紹介する目的にて製作しました(ちなみに3DCAD上では180mmルールでも4WSを成立させる目途が付いています)。

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多用性の勧め

〇4WS

〇バックミラー型前後方位カメラ(ワイドバージョン)

 

2020年モデル

2015年モデルが履帯型でしたが、タミヤのトラック&ホイールの履帯は樹脂製なので滑って押し負けるシーンが多く、履帯型のイメージを損ねたのではとの反省から、履帯による路面接地面積を生かした強力な推進力をプレゼンするモデルとして設計しました。

 

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多用性の勧め

〇履帯型ロボット

理にかなった(数学・物理に則った設計)作り

〇NiMHバッテリーBMS搭載(過放電防止:低電圧時の電源回路遮断)

 

これ以降のモデルは他記事を参照ください。