試合の様子をビデオカメラに取っているチームを良く見ますが、撮った動画をどれぐらい活用しているでしょうか。
ロボットの仕様策定や、動作確認、チューニングに活用する事で、性能向上や評価時間の短縮が期待できます。
と言うことで、活用例を紹介します。
試合動画の分析(目的を絞って見る)
RCJサッカーライトウェイトで世界大会優勝経験のあるチームに御協力頂いて、動画を分析したことがあります。
進行停止処理により中立点にボールが置かれた瞬間の”ロボット - ボール間距離”に注目します。
ゴール、ラインなどの長さ、ロボットの直径を20cmとして距離を推定します。
4試合の測定結果は以下の様になります。
これを頻度で表すと
ロボット2個分の距離40cm以内が全体の85%を占めることが分かります。
これを基に私のロボット(OB・OG・おやじ参加可能の大会用)は停止状態から最短時間で40cm先に到達可能なギヤ比120:1を選定しています。
性能評価(ビデオ編集ソフトの活用)
次にこのギヤ比120:1のロボットの性能評価を行います。
スタートボタンを押して3秒後にフルスロットル前進、0.3秒後に停止(ブレーキ)のプログラムを動作させます。
ビデオ編集ソフトで不要部分をカット(記録容量の低減・後で見返す時の時短)し、タイムコード(ここでは秒を選択)を挿入します。
守備側スタートを想定して30cm先にボールを置きます。
※ 0.3秒 メンテ中
0.067秒にスタート、0.367秒に30cm到達、0.500秒停止、ブレーキ設定での制動距離はボール半分と分かります。
守備側は攻撃側の位置決定後にフォーメーションを決定できます。
ボールへの到達が0.3秒なら、常に主導権を握る斬新な戦術が展開できます。
ブロック大会の優勝チームと2台vs1台のハンデ戦エキシビションマッチを行った時に、互角に戦えたので戦術の有用性は示せたと思います。
動画もあるのですが世界大会終了まで公開しない約束をしていますので、大会終了後に記事にしたいと思います。
ハイスピードカメラの活用
カシオ HIGH SPEED EXILIM、ソニーDSC-RX100M4以降のHFR(ハイフレームレート)機能搭載機種、高機能スマホなどにもハイスピード撮影機能が搭載されるなど、プロ機材だったものが個人で扱える時代になりました。
ロボットの動作(ソフトのパラメータ評価も可能)、ユニットの動作確認・チューニングに威力を発揮します。
オレンジボール用のドリブラの評価を例にします。
電動ラジコンカーにおいてオイルダンパーは走行安定性を得るための重要アイテムです。
サスペンションのストローク、バネの強さ、タイヤの種類、路面状況などに対してオイルの硬さ調整を行います。
ロボットに応用する場合も同じで、製作したドリブラーの構造によってダンパーの取付位置やオイルの硬さを調整することによって安定した性能を得ることができます。
RCJ2009年大会で独立懸架サスペンションやオイルダンパーを搭載したロボットを確認しているので、意外と歴史の長い技術ですが、チューニング方法や評価方法には困っている様子です。
以下の動画は#200~#1000のオイルの評価結果です(960fps)。
#400が良い感じで#800がダメダメで#1000がまた良い感じです。
"実験としては失敗では?"と思った方多いのではないでしょうか。
ボールを弾き出してしまう原因とダンパーの作用を整理しておくと、面白い結果だったことが分かります。
原因は”ローターで加速されたボールがロボット自体にぶつかって跳ねる”です。
ダンパーの効果は
①ボールの加速と同時に押し上げられるローターユニットの上昇速度の低減
②ローターユニット上昇後の降下速度の低減
#400はボールの加速をある程度低減してボールの跳ね返りを小さくし、ローターユニットの降下速度はそれ程遅くないので、降下中のローターがボールをトラップする形になり、良好な結果となってます。
#800はよりボールの加速を低減しているのですが、ローターユニットの降下速度が遅くなりボールを触れなくなり、はじき出してしまいます。
#1000は十分にボールの加速を低減しているので、跳ね返りが殆ど起きない状態になっており、良好な結果となってます。
この評価結果より#1500で組立てとても良い結果だったので評価動画が残ってないのが残念ですが、動画を注意深く解析する意義は御理解頂けたと思います。
※ドリブラダンパオイル評価S メンテ中
オイルダンパーの有無比較が欲しい所ですね。
先ほどのドリブラと違うものですが、某ブロックのサマーキャンプへ持ち込む予定で模型屋さんで購入可能なタミヤ遊星ギヤボックスを用いて作ったドリブラです。
基本構造は同じですので、オイルダンパー有り無しの比較として下さい。
オイルダンパーの効果を理解して頂く為に作成したプレゼン資料に貼った動画(960fps)なので短いですが、最初のバウンドが振動状態で継続する症状が捉えられています。
※ドリブラ振動S メンテ中
バネのみでボールを押さえると必ず減衰振動します。
オイルダンパーはオイルの熱損で振動を低減(減衰振動抑制)する働きをしてくれます。