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大電流経路の分離 (PCBを自作する場合のGND処理)

はじめに

学生さんの設計した基板の問題点抽出を行って、問題点の解決方法(設計のセオリー)について指導する機会に恵まれています。

その中で圧倒的に多い2つの問題について解説したいと思います。

今回は大電流経路のある基板設計についてです。

以前I2Cバスのノイズ対策の一環で1点接地の話をしました。

これは電源基板、マイコン基板、モータドライバ基板などを配線で繋ぐ場合のお話です。

PCBを自作する際に、モータドライバなどの大電流経路のある回路を一枚の基板に作りこむ場合にも1点接地は大変重要です。

1点接地を守らずにPCB設計を行うと、A/D値のバラツキや通信障害、電子部品の故障など色々な障害に陥ります。

 

PCB設計(大電流経路の分離)

RCJレスキューやサッカーで不足なく入門機が作れる安価なマイコンボードは作れないか?と常々考えていたので、ArduinoNano・BMS・4CHモータドライバ搭載の基板を設計製作することにした。

最近はレーザー加工・エッチングで基板を作るのにハマっているので、今回も片面基板でPCB設計を行います。

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上図の赤線はGNDの輪郭を示しています。GNDの太さが必要(大電流経路の為)なモータドライバとBMSはGNDのポリゴンを共有して、300mA程度供給できれば良いArduinoNano回りはGNDを分離してモータドライバの電流経路を避けてBMSと1点接地してあります。

モータドライバの制御をArduinoNanoのポートにて行うのですが、ゲートドライブ用トランジスタのベース電流制限抵抗をリード型にして、モータドライブ用GNDを渡らせています。

これによってモータドライバ用GND幅の確保とポートの保護を兼ねています。

使用予定の停動電流3Aのモータにて動作確認を行った後、停動電流14Aのモータにて動作確認しました。

停動電流14Aの”停止-フルパワー”時にバッテリー電圧の低下を確認しましたが、機能上の問題はありませんでした。

 

PCB設計(ベタGND)

仕事で長らくPCB設計をしていると、無意識に問題の起こらないパターンを引いてしまうので、FETが焼ける・突然部品が壊れる・通信障害の類は久しく無縁になってます。

今回は1点接地の思想を封印してベタGNDかつマイコンのポートが大電流経路の上を渡るパターン設計を試みます。

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中央に並んでいた8本の1kΩ抵抗をジャンパー線に変更し、モータドライバ用GND(大電流経路)をまたいだ先のFETドライブ用トランジスタのベースに1kΩチップ抵抗を付ける構成に変更し、同一ポリゴンで外形を囲ってベタGNDにしました。

停動電流3Aのモータにて動作確認を行い問題なし、停動電流14Aのモータにて動作確認を行っている最中にスローアップ・スローダウン(PWM動作の確認)プログラムが停止しました(マイコンの故障を確認)。

ベタGNDの他にもBMSからモータドライバへの最初のジャンパー線をフェライトビーズ貫通型から普通のジャンパー線にしたり、色々ノイズ対策を外していたので、動作が安定するまでの過程を順番に確認しようと思ったのですが、ArduinoNanoが修理不能(USB-シリアル側が破壊、Atmega328Pはチップがあるので直せるのですが)の故障に陥ったので2段階目(フェライトビーズ挿入)にて断念しました。

 

まとめ

PCB設計の段階で動作不良を低減するには

〇1点接地を考慮して大電流経路の分離を行う

〇モータドライバの制御線はマイコン直近に抵抗を配置して保護する(引き回さない)

〇同じ対策状態の場合、障害発生のリスクは電流が大きい程、高くなる。

 

次回はもう一つの問題について解説します。