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レーザー加工機の使い方 その3 (立体構造部品編・ドリブラーの製作)

位置決めピンを用いた立体構造

平行ピンなど寸法精度の高い部材を位置決めピンに使用して複数枚の板をアクリル接着材にて積層する事で立体構造を持つ部品を作る事ができます。

 

位置決めピンの使い方

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レーザー加工機用3D CADデータ

CADデータ作成の際に接着作業の位置出しに使う平行ピンの穴を用意します。

5部品全て切削して2分19秒です。

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平行ピンで位置決めをして溶剤型アクリル接着材を用いて接着する

この作業を行って完成したスプロケットホイールはこちら

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プラスチックTTギヤモータ用スプロケットホイール

接着材は直ぐに剥がれるイメージがある様ですが、溶剤型接着材は強力です。

アクリル接着材の場合、剥がそうと思って力を加えると接着面と違う所が割れる位です。また接着材乾燥時間がとても早く瞬間接着剤よりよっぽど”瞬間”です。

5部品の接着作業時間は5分程度です。

  

割れないアクリル板

アクリル板をレーザー加工で”ものづくり”する際の懸念事項に”割れ”の問題があります。

アクリルは曲げ強さや硬さでは文句のない材用ですが、応力集中時にガラスの様に割れる性質があります。

この為に厚み1mmの使用は避けたいところです。

そこで割れないアクリル板の登場です。

少し専門的になりますが、ガラスの様に割れる性質はアイゾット衝撃強さが小さい材料に起こります。

アクリサンデー株式会社さんのIR板(通常品はEX板)はこのアイゾット衝撃強さを大幅強化した割れないアクリル板です。

ホームセンターなどで購入できるものは”強化アクリル板”(強化PMMA)の名称です。

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 ペットボトル(PET)はご存じの通り、薄くても頑丈でガラスの様に割れることはありません。

この強化アクリル板はPETを上回るアイゾット衝撃強さを持っておりハサミで切ることもできます。(トレードオフで柔らかくなってます)

残念ながら入手可能なのは透明、半透明の厚さ1mmのみですが、”割れ”の心配の無い1mmの部分を含む立体構造を設計する事ができます。

 

ドリブラーの製作

強化アクリル板(1mm)の使用を前提に接着を用いた立体構造部品をモデリングします。

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接着による立体構造部品1

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接着による立体構造部品2

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ギヤ構成 81:1

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立体構造部品の組立

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実物

平板の組み合わせで立体物を構成するのに多少の慣れが必要かもしれませんが、この方法を用いる様になってから、ここ半年以上殆どNCフライスを使っていません。

もちろんNCフライスを使えばアクリル以外の材料も使えるのですが、諸々の事情で遠ざかっています。

〇材料費が安い上に無駄がない

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ギヤの保護カバーとギヤが同時に加工できた例

〇とにかく加工が早い

レーザー加工機がファンとポンプの音しかしないので稼働時間を選ばない

 

NCフライスを使っていた時は、切削時間が長時間にも関わらず、掃除機や洗濯機を使っても良い時間帯(近所迷惑にならない時間帯)しか使えないジレンマにより休日しか使えず、部品が揃うのに何週間も必要でした。

今は、帰宅後にも使えて1ユニット30分もあれば部品が揃います。

確かに購入単価は低価格のNCフライスより高いですが、エンドミルの様な消耗品は無くランニングコストは必要ありません。

購入前はCO2レーザー管 3000時間交換2万円を気にしていましたが、加工がとても速いので9か月使い倒して35時間(beamoはディスプレイにレーザー管の使用時間が表示される)と意外と消耗しない事が分かりました。

御参考まで。