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ラインセンサについて (その2 サッカーリーグ編)

今回はサッカーリーグ編です。

ジャパンオープンで使用されていたフィールドの白線はカーペットの裏面に白色塗装を行っているので光沢があります。

一方緑色のカーペットは繊維を染色した物なので光沢はありません。

高い値が欲しい白線に鏡面反射光が大きくて、低い値が欲しい緑色カーペットには鏡面反射光が小さいわけですから床面に垂直に取り付ける方がS/N比が良くなります。

白線に白色カーペットを使用している場合も鏡面反射光を考慮する必要がないので垂直取付で問題ありません。

レスキューチャレンジと違って取付に特別な工夫は不要ですが、緑色のカーペットを低い値にするには色の性質を利用する必要があります。

製品を着色する為に塗料(染料・顔料)が使われます。

人間の目が”色をどのように見ているか”についてはwebに分かりやすい解説が沢山ありますので、検索してみて下さい。

ここでは、余り解説されない色の話をします。

 

では緑色塗料の目的は?

答えは”人の目に緑色に見える事”です。

言い換えれば、赤色より波長の長い赤外領域で光を反射しようが吸収しようがどうでも良い訳です。

下図はイメージし易いように青色、緑色、赤色塗料の波長に対する吸収を示したものです。

吸収すれば”0”、全く吸収せずに反射すれば”100”としています。

ご覧の通り、一般的な塗料は赤外領域での吸収は殆どありません。

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IRフォトインタラプタの940nmの波長付近では吸収がないので緑色のカーペットの反射光量は下がりません。

白色LEDでは500nm付近の反射光量がガッツリあるので、ある程度の値が出てしまいます。

赤色LEDを用いてれば500nm付近の反射光量”0”なので充分低い値になります。

赤色LEDを用いるとラインセンサの投光がカーペットに吸収されるので、漏れた光で相手ロボットのビジョンセンサに妨害してしまう事も防げます。

この動画は実際に赤色LEDラインセンサを暗所で撮影したものです。

持ち上げないとラインセンサの光を確認できない程、光が漏れていない事が分かります

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このセンサの値は緑カーペット0%、白線60%(コンパレータ割込みを用いている都合でセンサ感度を控えてますが、白線100%に調整した場合カーペット3~5%程度でした)と安心して閾値を決めれます。

 

赤外線の話ついでに、少し横道に入りますが、前出の通り、一般の黒色の塗料には940nmに吸収はありません。

赤外線の内部迷光を嫌う光学製品の為に”カーボンブラック”と言う赤外領域に吸収のある塗料は存在しますが、高価なので一般製品の黒色パネルなどには使用されません。

つまり、パルスボールから見れば、壁、青色ゴール、黄色ゴールは鏡も同然です。

ライトウエイトのロボットがゴール際や壁際でボール追従の不調に陥るのは、ボールからの直接光なのか壁やゴールからの反射光なのか区別がつかない状態になるからです。

これを解決するには光学知識の応用が必要で、ライトウエイトは軽・薄・短・小・光学と色々な技術の総合力が問われます。

もちろんオープンにはオープンの難しさがありますので、”初心者にとってライトウエイトは難しい”と言っているだけですので誤解のないように!

ちなみに初心者講習会はオープンで行っています。

2007年当初はパルスボールではなかったので、蛍光灯と電球の違いや、距離2乗に反比例する件、IRセンサの視野制限を説明する為のイラストを苦労して描いたものですが、オープンなら色を学習する手順を教えてXで方位、Yで距離が分かりますで、ボールを追ってゴールに向かうプログラムまで行けますし、ハードもラインセンサとPixy2をポン付けするだけで性能がでるので進行によどみがありません。

ご参考まで。