隠居エンジニアのものづくり

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モータドライバに使用するFETのパターンについて

はじめに

前回の続きで、もう一つのメジャートラブルについて解説します。

新人エンジニアに最初に必ず言うのですが

〇データシートの表紙はコマーシャル(良い事しか書かない)

〇データシートはグラフまで理解する

回路設計に従事している全てのエンジニアが完璧にできているか?と言うと、答えに困るところもあります。

そこで学生さん向けに、FET取り扱い時のメジャートラブルに的を絞って解説したいと思います。

 

FETのスペック

皆さんの求めるスペックは”何アンペア流せるか?”だと思います。

入手性も良く(共立エレショップさんで買えます)モータドライバを作るのに便利なので愛用しているロームの複合FET(Nch+Pch)SH8MA4のデータシートの表紙です。

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連続電流8.5A、パルス電流18Aのモータドライバが作れるのですが、いくつかの条件を満たす必要があります。

表紙のPch:RDS(on)(Max.) 29.6mΩはVGS=-10Vの時で、VGS=-4.5Vなら41.3mΩになります。

以下の様に電力に関する記述には、放熱性が良い0.8mmセラミック基板30mm×30mmに実装した場合と条件付きです。

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表紙に記載の性能を出す為には動作条件を整え、上図条件に匹敵する放熱条件を基板上に用意する必要があります。

と言う事で

界隈で起こっているFET取り扱い時のメジャートラブルの原因は放熱設計の不足です。

放熱を行う銅箔パターンについて解説します。

 

パターンによる放熱

SH8MA4は放熱用パッドがパッケージにありません。

この様な放熱用パッドのないSOP8パッケージは下図の様にドレインが放熱用になっています。

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FET SOP8 内部構造 

つまり、ドレイン側に放熱パターンを作り込む事でジャンクション温度を安全領域に下げる事ができます。

 

熱設計

細かいところは省略して、概ねの答えが出せる程度の設計計算を目指します。

必要なのは、皆さんが作りたいモータドライバの連続定格電流FETのON抵抗です。

FETに発生する電力は W = (モータドライバの連続定格電流)^2 × FETのON抵抗

モータドライバの連続定格電流:3A、SH8MA4のON抵抗:41.3mΩとすると

W =3^2(A) × 0.0413(Ω) = 0.3717(W)

下図より放熱パターンの銅箔面積は8(mm) × 20(mm) = 160(㎟)f:id:Blackbox_crusher:20211024145408j:plain

銅箔パターンによる放熱については形状によっても異なる為に、色々な指標がありますが、今回は下グラフを使用します。

後述しますが、このグラフのスタートは15.7(㎟)になっています。

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グラフよりθJAは74(℃/W)とします。

FETのジャンクション温度は0.3717(W) × 74(℃/W) ≒  27.5 (℃)

この値は上昇分ですので室温25℃の時には52.5℃になります。

絶対最大定格(これを超えると破壊する)150℃にはかなり余裕があります。

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推奨パッド寸法図

推奨パッドの銅箔面積は0.65 × 1.15 ≒ 0.75(㎟)となります。
グラフの始点15.7(㎟)より遥かに小さく、簡単にFETのジャンクション温度の絶対最大定格を超えてしまいます。

PCBCADのデザインルールによってパッドより太い線が引けないのと、ポリゴンのサーマルONがデフォールトになっている事も相まって、放熱不足になっている例が少なくありません。

FETにて大電流を取り扱う際には、放熱パターンに配慮した設計を心がけましょう。

コラム

データシートの始点・終点(先が無い)には理由があります。

このグラフの場合、”FETの想定アプリケーション(モータドライバ)では最低でも4mm×4mm以上の銅箔パターンは用意しましょう!”と読み取れば良いと思います。

 

出典:

ロームSH8MA4データシート

TechWeb 熱抵抗データ:実際のデータ例

 

大電流経路の分離 (PCBを自作する場合のGND処理)

はじめに

学生さんの設計した基板の問題点抽出を行って、問題点の解決方法(設計のセオリー)について指導する機会に恵まれています。

その中で圧倒的に多い2つの問題について解説したいと思います。

今回は大電流経路のある基板設計についてです。

以前I2Cバスのノイズ対策の一環で1点接地の話をしました。

これは電源基板、マイコン基板、モータドライバ基板などを配線で繋ぐ場合のお話です。

PCBを自作する際に、モータドライバなどの大電流経路のある回路を一枚の基板に作りこむ場合にも1点接地は大変重要です。

1点接地を守らずにPCB設計を行うと、A/D値のバラツキや通信障害、電子部品の故障など色々な障害に陥ります。

 

PCB設計(大電流経路の分離)

RCJレスキューやサッカーで不足なく入門機が作れる安価なマイコンボードは作れないか?と常々考えていたので、ArduinoNano・BMS・4CHモータドライバ搭載の基板を設計製作することにした。

最近はレーザー加工・エッチングで基板を作るのにハマっているので、今回も片面基板でPCB設計を行います。

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上図の赤線はGNDの輪郭を示しています。GNDの太さが必要(大電流経路の為)なモータドライバとBMSはGNDのポリゴンを共有して、300mA程度供給できれば良いArduinoNano回りはGNDを分離してモータドライバの電流経路を避けてBMSと1点接地してあります。

モータドライバの制御をArduinoNanoのポートにて行うのですが、ゲートドライブ用トランジスタのベース電流制限抵抗をリード型にして、モータドライブ用GNDを渡らせています。

これによってモータドライバ用GND幅の確保とポートの保護を兼ねています。

使用予定の停動電流3Aのモータにて動作確認を行った後、停動電流14Aのモータにて動作確認しました。

停動電流14Aの”停止-フルパワー”時にバッテリー電圧の低下を確認しましたが、機能上の問題はありませんでした。

 

PCB設計(ベタGND)

仕事で長らくPCB設計をしていると、無意識に問題の起こらないパターンを引いてしまうので、FETが焼ける・突然部品が壊れる・通信障害の類は久しく無縁になってます。

今回は1点接地の思想を封印してベタGNDかつマイコンのポートが大電流経路の上を渡るパターン設計を試みます。

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中央に並んでいた8本の1kΩ抵抗をジャンパー線に変更し、モータドライバ用GND(大電流経路)をまたいだ先のFETドライブ用トランジスタのベースに1kΩチップ抵抗を付ける構成に変更し、同一ポリゴンで外形を囲ってベタGNDにしました。

停動電流3Aのモータにて動作確認を行い問題なし、停動電流14Aのモータにて動作確認を行っている最中にスローアップ・スローダウン(PWM動作の確認)プログラムが停止しました(マイコンの故障を確認)。

ベタGNDの他にもBMSからモータドライバへの最初のジャンパー線をフェライトビーズ貫通型から普通のジャンパー線にしたり、色々ノイズ対策を外していたので、動作が安定するまでの過程を順番に確認しようと思ったのですが、ArduinoNanoが修理不能(USB-シリアル側が破壊、Atmega328Pはチップがあるので直せるのですが)の故障に陥ったので2段階目(フェライトビーズ挿入)にて断念しました。

 

まとめ

PCB設計の段階で動作不良を低減するには

〇1点接地を考慮して大電流経路の分離を行う

〇モータドライバの制御線はマイコン直近に抵抗を配置して保護する(引き回さない)

〇同じ対策状態の場合、障害発生のリスクは電流が大きい程、高くなる。

 

次回はもう一つの問題について解説します。

 

 

I2Cのノイズ対策 その6(オシロスコープを用いた静電容量推定)

はじめに

界隈ではオシロスコープで波形観測できる環境が整っている様なので、静電容量を推定して、Rpを決定する方法について解説します。

これにより、より正確なRp選定ができます。
その5にて”I2Cバスに繋げる配線のトータルの長さを測り、配線長300mm当たり100pFと想定してバスの負荷容量を計算する。”と値はオーバー目の”見なし”となっていますのでオシロスコープを使える方は、この記事を参考にして下さい。

ファースト・モード:ビット・レート400kbit/s( 最大 ) にて設計計算を行います。

I2Cの波形は矩形波にはなりません

I2Cバスの静電容量を5Vに充電するのはRp、0Vに放電するのはマイコンやセンサ内のFETオン抵抗ですので、桁違いです。

当然立ち上がりと立下りの波形は全く異なりますので、矩形にはなりません。
どちらかと言えば”のこぎり”に近い波形です。

以下の様に仕様書でも立ち上がりが遅い事は明示されています。

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信号波形 ( I2Cバス仕様書 Ver2.1  2000年1月版より抜粋 )


矩形波に近づける事に執着してプルアップ側を強化すると、”Low Level”のマージンが無くなって通信障害を起こします。

静電容量推定方法

Rpの値が既知であることが前提になっています。

ここではRp=1kΩにします。

300mmの配線にセンサを付けて、オシロスコープにて立ち上がり波形を観測します。

時定数を測定しますので、トリガ電圧は3.16V( 1τ )に設定しました(Lowレベルのオフセットの影響は少ないので無視していますが、気になる方はオフセット分足したトリガ電圧を設定して下さい)。

立ち上がり-トリガの時間を測定します。

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時定数測定

測定結果は73.40nsとなりました。

以下の式で静電容量が算出できます。

時定数 ÷ Rp = 静電容量

73.4×10^-9(秒) ÷ 1×10^3(Ω) = 73.4×10^-12(F)

静電容量は73.4pFです。

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I2C × 2 イネーブル付I2C ×3 Atmega328マイコンボード

このマイコンボードを測定に使ってます。I2Cセンサを5個接続可能ですので、写真の300mmの配線を追加で接続します。

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300mm配線追加

300mmの配線追加で静電容量は95pF( 時定数95.00nsより )になりました。

差分より追加した300mm配線の静電容量が21.6pとなります。

300mm配線無しで基板のみの場合、計算上51.8pFとなりますが、実はSDS1104添付のプローブの静電容量30pFが含まれますので、実態は21.8pFです。

( SDS1104についてはこちら ↓ を参照下さい )

〇 300mm配線の静電容量 = 21.6pF

〇 基板の静電容量 = 21.8pF

〇 I2Cバスの静電容量は43.4pF

となります。

後述の設計計算に、この値を用います。

 

pFを問題にする場合のプローブの使い方

プローブとI2Cバスの間に配線を繋ぐと静電容量が増えますので注意が必要です。

グランドリードも静電容量を不定にする要因です。

pFオーダーの測定を行う場合はグランドリードを外して、スプリンググランドを使用します。

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スプリンググランドを用いた波形観測

設計計算

設計計算を行う為に必要なものは以下の4点です。

〇 安全率(I2Cバス仕様にはありません! VIL = 1.5Vに対して0.375Vを安全率4倍と定義)

〇 I2Cバスの電源電圧

〇 センサやマイコンのLow側へのドライブ能力

〇 I2Cバスの静電容量

安全率はマージンをどの程度に設定するか?ですので、自分が納得できる値を決めれば良いのですが、ここでは4倍(1倍はマージン無しなのでNGです)とします。

電源電圧は5Vとします。

ドライブ能力は4mAとします(ご使用のセンサやマイコンのデータシートで調べて下さい)。

I2Cバスの静電容量は前出の測定・計算結果 43.4pFを用います。

 

プルアップされた信号線をGNDに引っ張ることでLowにする方式ですので"Low Level"が守られている事が重要となります。
各接続デバイスのノイズ・マージン(ヒステリシスを含む)はHigh側0.2VDD、Low側0.1VDD ( I2Cバス仕様Ver2.1より引用 ) とLow側が厳しいことが分かります。
VIL(Low level Input Voltage) = 0.3×VDD
ですのでVDD = 5.0Vの場合1.5Vです。

各デバイスは1.5V以下ならLowと判断してくれます。

安全率4より、1.5V ÷ 4 = 0.375V をLowレベルに設定します。

ドライブ能力4mAにて0.375VとなるRpは

Rp =( 5V - 0.375V ) ÷ 4mA = 1156.25Ω

E24系列で選択するとRp = 1.2kΩとなります。

 

VIH(High level Input Voltage) = 0.7×VDD
ですのでVcc = 5.0Vの場合3.5Vです。
これを守るにはI2Cバスの静電容量とRp( プルアップ抵抗 )からなる時定数による”立ち上がりのなまり”に注意が必要です。

このなまり具合は、S D AおよびS C L信号の立ち上がり時間300ns以内と仕様にありますので、安全率4倍より300ns ÷ 4 = 75ns とします。

75ns以内に3.5Vを超えると言う意味ですが、Lowレベルが完全に0Vにならず、少しオフセットしている事と計算が楽なので3.16V( 1τ )に丸めを行います。

この丸めにより時定数を算出すると、そのまま立ち上がり時間になります。

Rp = 1.2kΩ・I2Cバスの静電容量 = 52.08pFより

1.2×10^3(Ω) × 52.08×10^-12(F) =   52.08(ns)

と75nsに対して余裕があります。

RpはI2Cバス全体のプルアップ抵抗ですので、複数センサを繋げる時は合成抵抗になりますので注意が必要です。

 

出典: I2Cバス仕様書 Ver2.1 2000年1月版

SDS1104 デジタルストレージオシロ 4ch100MHz インプレ

4CH 1GS/s ¥38,200

桁間違ってんじゃね?と思う値段ですね。

そろそろ、長年連れ添ったアナログオシロスコープにデジタルストレージ基板を増設した骨董品に別れを告げて、買い替える予定だったので”額面の半分の性能でも良し”と思って購入しました。

製品サイトにて、アプリやファームウエアのサポート状況を確認!

OWON SmartDSシリーズデジタルオシロスコープ | owonjapan

リンク切れしてました。日本語になって、SDS1104のページとなっています。

SDS1000-4ch (owon.co.jp)

問題なしと判断して発注!

※秋月さんとの共同開発との事でSDS1000シリーズにSDS1104はありませんでした。

結論から申しますと結構使えます。

インプレッション

製品サイトにて”SDS1000_series_Oscilloscope_USER_MANUAL_.PDF”がダウンロードできます。

このマニュアルの2CHオシロスコープとSDS1104は殆ど同じですので事前に見て頂ければ操作方法等詳細に知ることができます。

2023/06/18現在、SDS1104のマニュアル類がUpされています。

実際に使った感じを中心にお話します。

電源投入から起動まで23秒(V 1.1.0)最初の7秒間は真っ黒ですが "Run/Stop"ボタンがパイロットランプ代わりに光ります。

操作性は時間軸(水平)操作は横並びに、電圧(垂直)操作は縦並びにレイアウトされているので直観的に操作できます。

 

時間分解能×ストレージ

デジタルストレージオシロの使い勝手は、取り込んだ波形をどの程度操作できるかで決まります。

実際にI2Cバス(400kHz)の観測を行います。

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100μs/div シングルトリガー取り込み

この状態で時間軸を操作してデータ読みの為に拡大します。

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ストレージ操作 時間軸20倍 (5μs/div) に拡大

時間軸を20倍に拡大してもデータ読みできる状態を保っています。

取り込み時の5個のデータはスクロールする事で全て確認できます。

Arduinoのプログラムに待ち時間が挿入されているので、まばらなデータになっていますが、連続データなら20個程度は観測できそうです。

カーソル操作

2本のカーソル "A"、 "B"に独立のスイッチは用意されていません。

一つのスイッチで "A"→ "B" → "A+B" → "A" とトグル動作します。

最初ちょっと戸惑いましたが、慣れました。

状態表示

この価格で漏れなく状態表示してくれるのは感心しました。

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カーソルによる時間測定

1CHのオフセット、トリガーレベルを3.16V(5Vの1τ電位) に設定している事など常時表示されています。

Bカーソル(X2) をトリガと完全に一致させるのも楽々です。

個人的には表示ボックスは右端の方が好みです。

画面保存

BMP形式で画面のコピーがUSBメモリーに保存できます。

この記事は、この機能で保存した物を使用しています。

画面キーボードの”ENTER”でダイアル押し込みして保存ですが、ファイル書き込みの進行表示画面に移行するまで7秒程ありますので、”あれっ!押せてなかった?”と思いましたが、慣れました。

使用実績のあるオシロでは、テクトロニクスTBS1154に近い感じです。

USB記録が遅いところもそっくりです。

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テクトロニクス TBS1154 4CH 150MHz 1GS/s

これのCHなどの独立ダイヤルを1個に纏めて切り替えにした感じですね。

TBS1154はFFT機能がないので、ファンクション的にはSDS1104の方が上になります。

ちょっとした事ですがTBS1154のプローブは色分けリングが添付で、ユーザーが取り付けるのですが、SDS1104はCHカラー(画面、操作パネルの色分けは統一されたます)に合わせた色分けリングがプローブ、BNCコネクタに取り付け済みでした。

 

付属プローブ

安価な計測器の添付プローブあるあるの”取り回しの悪い硬い”ケーブルを覚悟していたのですが、普通に滑らかで意外と高級感あります。

補正も精度良くできました。

もちろん4本付いています。

 

 

 

ロボカップジュニアサッカーのLED表示について5

前回、遮光が簡単な事と "3DCADで設計したり基板作成している人には造作もない事" と書きましたので、その造作もないところを解説します。

 

LEDはそのままでは真上に配光していて、横からの視認性が良くない上にアウトオブバウンズの判定の為に、上からロボットを覗かなければならない審判の目にダメージを与えます

乳白色の樹脂板を散乱版として利用するアイデアは素敵性能が高くて、審判の目へのダメージ軽減もできるので良い設計だと思います。

この散乱版を黒色の樹脂に変えて、相手ロボットのビジョンシステムから見えない高さにするだけでOKですので、3DCADでの作業はとても簡単です。

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散乱板を遮光板に変更

筒に散乱板を付けるのは、ちょっと面倒ですね。

LEDの電流制限抵抗を高い値に変更して必要最低限の輝度に調整するのも一手です。

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変更例

見え方については”人”の判断が加わるので、グレーゾーンと思ってNG判断が下った時に簡単に”表示OFF”にできる様に準備する事をお勧めします。

 

ロボカップジュニアサッカーのLED表示について4

遮光は簡単です

方法は光路を塞ぐか、相手ロボットが見えない様に光路を制限するかの何れかです。

シンプルでとても簡単な事です。

3DCADで設計したり基板作成している人には造作もない事ですので、汎用部品を用いてロボットを作っている方向けに解説致します。

 

基板のLEDは黒色テープを貼れば遮光できます。

お勧めは日東電工・電気絶縁用アセテート基材粘着テープです。

ビニールテープの様に貼る時のテンションで伸びて、貼った後しばらくして見ると縮んでいると言う事が無く、剥がした後の糊残りも少ないです。

手で綺麗に(繊維方向に)切れるので、作業性も良いです。

マイコンボードやセンサなどの基板のLEDは殆ど表面実装なので貼るのは簡単です。

無駄に明るいやつは2重、3重に貼ればOKです。

手持ちの基板で3重貼りを超えた物はありませんでした。

砲弾型は巻き付ければOKです。

ロボットから見えなくて人から見えるLED表示

筒状にして220mmの位置から見えない様にすれば相手ロボットからみえません。

それより高い位置からは覗けるので人はLEDを確認できます。

デバッグ用LEDユニット

赤丸が実際に2019モデルで使用していたデバッグ用LEDユニットです。

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アップ&断面図

電圧計

0.5mm塩ビ板を "コの字" に曲げて黒色テープで電圧計に巻き付けます。

"コの字" にした理由は2つあります。

〇平板に印を付けて(電圧計の幅)ラジオペンチで曲げる作業は"コの字"までは簡単!

〇黒テープで巻く時に空いている面はテープの粘着部になるので視野制限板の固定を兼ねる事ができる

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左から 黒色アセテートテープ 0.5mm塩ビ板  塩ビ板をコの字に曲げた物

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視野制限板付き電圧計の完成例

少し台形になっていますが実用上問題ありません。

視野制限板自体の高さはアセテートテープに合わせて19mmです。

もちろん黒色の粘着テープならなんでもOKです。

 

ラインセンサ

ダイセン電子工業さんのホワイトラインセンサを例にします。

ホワイトラインセンサー | ロボット,センサー | 株式会社ダイセン電子工業 (daisen-netstore.com)

このセンサは可視光フォトトランジスタ白色LEDの直接光が当たらないようにスポンジで遮光されています。

このスポンジの厚みが6mm程です。

センサ感度には距離特性があり、感度が良い ”おいしい距離” があります。

3mmアクリル板をレーザー加工する前提の設計ですが、下図の青色部分は5mmか6mmのスペーサでOKです。

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ホワイトラインセンサの組立

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ラインセンサ遮光板寸法

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光路制限&スーペーサ

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ラインセンサ取付時

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LED裏&ガラス基板導光対策

SEM3やFR4を用いたセンサはLEDの光がガラスや樹脂を伝わって裏面や側面に漏れますので黒色テープで対策します。


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光路制限部分

写真は底側から斜めに見ています。

LEDとフォトトランジスタが隠れている様子が分かると思います。

 

ボール補足センサ

マイクロスイッチ式は機構センスと機構部品取り扱いのノウハウが少し必要ですので、解説したいと思います。

ヒンジ・レバー型を使用しますが、動作に必要な力25g、もどりの力は2gと大変小さな力を扱う機構となっています。
ロボットが140gのパルスボールに勢いよくぶつかる部分に使えば、"あっという間" に壊れます。
一旦頑丈な可動部品でボールを受ける構造に設計する必要があります。

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マイクロスイッチのデータシート 使用上の注意

もどりの力2gを取り扱うにはボールベアリングの使用は必須です。
また、ベアリング使い方にも繊細さが必要になります。

 

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ベアリングの構造

この内輪が外輪固定部と触れると意味が無くなるのですが、M3ネジで止められるサイズになると容易に摩擦が発生します。

また下図の様にネジ止めの締め付け圧が内輪と外輪に圧力を発生させる様な構造では2gでは動きません。

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M3のネジ頭の内側もM3ワッシャも、ベアリングの精度に見合う平面ではなく、丸みがありますので外輪に触れてしまいます。

ネジを締めこんで行って徐々にベアリングの動きが悪くなる場合は、これが原因だと思って良いでしょう。

これを改善する為にベアリングの精度に見合うスペーサを挟みます。

お手頃価格で入手性の良いタミヤHOP-UP OPTIONS φ5.5mm アルミスペーサーセットを愛用しています。

0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0mm厚が各4個入ってます。

下図の様な構成にすれば、締めこんでも滑らかに動きます。

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ボールベアリング部構成例

愛用のベアリングは NSK ステンレスミニアチュアベアリングZZ フランジタイプ SMF63ZZ です。

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実際のボール補足センサ

 

出典:極超小型基本スイッチ形D2FSデータシート
   Koyo ベアリングコラム

ロボカップジュニアサッカーのLED表示について3

雑感

便利な世の中になったもので、”つぶやく”とあっという間に色々な情報を提供して頂けます。

フォロー頂いている皆さんに感謝です。

爺(読みはジジイ)はPCでツイッターしているので、PCを開いた時しかタイムラインを見ないので、色々流れて行ってしまっているのかなぁと思ってますが、通知案件は流れないので重宝してます(先に謝っておきますがレスポンス超遅いのはご勘弁)。

本稿の内容は思いっきり爺の想像です!

 

干渉の確認方法

さて、本題ですが、YouTubeにUpされている”【RCJJサッカーTC公式】干渉の確認方法”ですが2018/03/22投稿と言う事と、動画の内容から ”ビジョンシステム(光学系センサ類)に干渉する可視光を生み出すどんなロボットの部品も隠さないといけません" のルールには非対応と思われます。

動画からは、実際に試合で使用するプログラムを前提にしている事が想像できるのですが、理由は明確で試合のプログラムと干渉の証明用のプログラムが同じ色判定をしている事を確認ができないからだと思います。

Pixy Momでの証明が不可なのも同じ理由でしょう。

干渉証明用プログラムの準備が許されない前提では、”ゴール” など試合に使用するプログラムが "追いかけない物" に対する干渉の証明はできません。

 

2022年度版【RCJJサッカーTC公式】干渉の確認方法

結論から申しますと、2022年度版は作成されないと思います。

黄色に塗装さたロボットは車検でNGとなります。
2018年まではLEDの干渉は当事者のクレームによって判定する手順でしたが、2019年以降はロボットの仕様として、規定 (相手のロボットのビジョンシステム(光学系センサ類)に干渉する可視光を生み出すどんなロボットの部品も隠さないといけません) されています。

黄色に塗装されたロボットと可視光を出す部品を隠していないロボットは等価です。
ルールにしたがって車検でNGにすれば良い事で、干渉のクレームの発生する案件ではなくなった訳です。

したがって、”干渉の確認方法”の動画作成は不要となります。

判定に関する指針などが、今後提示される事もないでしょう。


LEDの干渉はビジョンシステムへの影響が大きく、カメラ搭載ロボットの比率が高まり、可視光を出す部品を隠す必要性が見えてきたのだと思います
ルール改定の意図も競技中の干渉チェックをしない事を前提にしていると考えると合点がいきます。

 

RCJJ2019 和歌山でビカビカのロボットが競技できた理由

サッカー競技のルールでダブルスタンダードは珍しくないのですが、考察しておく必要はあるでしょう。

”相手ロボットにビジョンシステムが搭載されてない場合で、双方合意の上で特別に可とした”なら大きな問題はないでしょう。

ビジョンシステムに照明光以外の光が入ることに対する認識の甘さが大会側、選手側にあったと仮定すると、”相手ロボットにビジョンシステムが搭載されている場合で、双方合意の上で特別に可とした”場合が発生したかもしれません(実際にあったかどうかは分かりませんが)。

この場合、意図せず、ビジョンシステムに妨害して有利に試合を行った事になります。

後で気づくと双方後味の悪い試合になってしまいますので極力避けたい所です。

 

ダブルスタンダードと並んでエンジニア視点で見た”変なバイアス”があります。

例えば、”モータが焼けるので押し合い状態は速く裁く事”と言う審判の心得(今は知りません古い話ですので)があったのですが、”何で直ぐに焼けるのか?”→”モータには定格があり、超えると寿命が短くなったり、焼き付いたりする”→”定格を守った設計またはモータ選定”に至るパスを潰している様にしか見えません。

確かにお小遣いでロボットを作っているのでモータが焼けたら可哀そうと言うのは分かるのですが、アイデアコンテストにおける”気づき”を潰す方が可哀そうだと思いますし、”焼けたモータ”は授業料と考えて頂ければと思います。

同じように”遮光は難しい”と言う認識に基づいて”多少の漏れは仕方がない”と言うバイアスが加わっている可能性を想像します。

これは”180mmに収めるのは難しい”と言う認識に基づいて”183mmまではOK”とするのと等価なのですが・・・。

 

日本リーグの対応

初心者に遮光対策の負荷が増えるのは、裾野を広げる為の日本リーグの成り立ちに逆行します。

初心者講習を "入門キット+Pixy2" で行っている身としては遮光して頂きたい所ですがPixy2にて評価した結果、メジャーな入門キットのLED表示では誤動作には至らない様です。

また、水平方向に放射して壁やゴールなどを照らす場合に影響が大きい事が確認できました。

と言う事で、LEDに関するルールのアップデートをしないか、”壁を照らすLEDが無い事” 位の実質的には何もしなくて良い緩いアップデートで良いと思います。

ビジョンセンサを本格的に使いこなしたい方は ”ワールド にチャレンジして下さい”で良いカテゴリーですので過激なルールにならないことを願います。