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バッテリーの選び方 その1(理論編)

はじめに

ロボット製作に必要なパーツは色々ありますが、パワーの源となるバッテリーの性能の違いはロボットの性能に直結します。

バッテリーの選定はとても重要と言えます。
今回は、バッテリーの選定に必要な要件や用語の解説を行います。

Ni-MH・Li-Po・Li-Fe

入手性の良い模型用のバッテリーはこの3種類だと思います。

Ni-MH・Li-Po・Li-Feの順番に製品化されています。

Ni-MHの重量エネルギー密度を大幅に超える二次電池としてLi-Poが製品化され、形状の自由度の高さからモバイル製品に広く採用されました。しかしながら単独で燃焼の3要素(可燃物・酸素供給源・点火源)を備える危険性の高さ、放電に伴う電圧低下、低温特性などNi-MHに劣る部分もあり、車載ではNi-MHを置き換えるには至りませんでした。

Li-Poの発火・爆発の要因となる熱暴走を無くし、放電特性を改善した次世代リチウム二次電池としてLi-Feが製品化されました。

 

Li-Po放電特性

Li-Fe放電特性

定格容量の近いLi-Po、Li-Feの放電特性を掲載しましたが、公称電圧が異なるなど比較しにくいので、電圧と容量を百分率換算して特性比較したのが下図です。

 

Li-Poの放電特性を改善したLi-Fe

必要要件

パフォーマンスの高いロボットに仕上げる為の必要要件は以下の通りです。

〇サイズ・重量
・車両規定をクリアする為にコンパクト・軽量であることは重要です。

〇放電特性

・モーターの停動電流は"1A"を軽くこえます(ダイセン電子工業さんのロボサイトモーターでも停動電流3.06Aです)のでDC-DCコンバータを用いて定電圧供給するのは重量・サイズの観点から現実的ではありません。

ですので、モーターへはバッテリーから保護回路を介しての直接供給になります。

直接供給の場合はバッテリーの放電特性の傾きが小さい事が重要です。

乾電池の様に電池残量が少なるなる程、電圧が低くなるのでは、比例制御のゲイン等の制御値が定まりません。

レスキュー競技では影響度が高いのですが、Li-Po仕様のレゴマインドストームは動力モータをサーボモーター(電圧制御ではなく、回転数制御)にする事でクリアしています。

サッカー競技では、遠心力シュートのボール速度・コースが電圧変動の影響を受けます。

Li-Poの電圧変動の影響を軽減するには、バッテリー電圧を分圧してマイコンで監視して最大出力を抑制する方法が考えられます。

満充電電圧4.2Vを100%として80%まで低下する傾きであれば、最初はモーター出力を最大80%に制限しておいて徐々に制限を100%にして行けば、モーターの実質的出力は終始変わらず高い制御性を得る事ができます。

実は、4.2V×80%=3.36Vに安定化するのと等価ですので、3.3Vで安定な放電特性を持つLi-Feを使うのと大差ありません。

公称電圧の意味合は皆さんがイメージしていたのとは異なるのではないでしょうか?(以下の用語説明を御参照下さい。)

 

ロボカップジュニアサッカー界隈で、どういう訳かLi-Poが高性能バッテリーと言うイメージがあるようですが、完全自立制御のロボット競技であるロボカップジュニアにおいては使い勝手の悪いバッテリーと言えます。

 

二次電池の性能表記用語

〇満充電電圧

100%充電を行った際の電圧(V)

 

〇放電終止電圧

安全に放電を行える放電電圧(V)

 

〇公称電圧

電池を通常の状態で使用した場合に得られる電圧(V)の目安

概ね満充電時の電圧と終止電圧の間の値になります

 

〇定格容量

満充電電圧から放電終止電圧まで放電した蓄電量(mAh)を示します

 

〇実効容量

過充電のリスク回避の為に満充電にならない蓄電量80%にて充電を終了、過放電のリスクを回避する為にが放電終止電圧を蓄電量20%にするなど、安全な運用の為に定めた蓄電量(mAh)