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Li-Feバッテリーの保護回路について

以下の記事を読んで頂いた事を前提にしています。

リチウムイオンバッテリーについて - 隠居エンジニアのものづくり

Li-Poバッテリーは高性能か? - 隠居エンジニアのものづくり


”タイトルに飛びついた方が関連記事を読み返して頂けないかも”と言うことで

ちょっとした概略計算(仮定&丸めをして計算)をします。

手持ちのLi-Feバッテリーは2セル6.6V 1450mAhです。

Li-Feバッテリーの理論容量 10(Wh) 熱容量 50(J/K) と仮定します。

理論容量 10(Wh)をショートなどで1秒で放出すると、Li-Feバッテリーの温度上昇は 

ΔT = 36000(J) / 50(J/K) = 720

バッテリーの正常時の温度が20℃の場合740℃に達します。

実際にはバッテリー内のアルミ箔電極が660℃以下で溶けて内部短絡は終息しますが、660℃でもバッテリーを構成する樹脂材料を燃やすには充分な温度です。

15.5mm × 34.0mm × 87.0mm  83gの小さなバッテリーですが、とても大きなエネルギーを持っている事がわかります。

密閉容器に大きなエネルギーを詰めた電池は一次電池二次電池の違いや種類、サイズの大小に関わらず破裂の危険があります。

短絡によるジュール損失によって発熱発煙・可燃物への延焼に発展する危険があり、安全に留意する必要があります。

Li-Poバッテリーは上記危険に加えて1083℃(銅の溶融温度)以上の火炎・爆発の危険があり、セル自身が燃える事から、別格のリスクを有すると判断され使用禁止としている競技会があります。

タミヤグランプリではLi-Poバッテリーの持ち込みすら禁止です)

 

回路と実際に製作されたロボットの配線(圧着・半田付け)の安全性を検査してくれる指導者が居ない方はNi-MHバッテリーを使用しましょう。

LI-Feの性能が良いのは重量エネルギー密度で1.2倍程度です。

体積エネルギー密度では0.8倍程度とHi-MHに負けてますので総合的には互角です。

無理してLi-Feを採用するメリットはありません。

性能差についてはこちらを御参照ください。

Li-Poバッテリーは高性能か? - 隠居エンジニアのものづくり

 

Li-Feバッテリーの保護回路

ロボット側に必要な保護回路は過電流、過放電、逆接続保護があります。

精度を求めて複雑な事を要求すると、ミスが増えてかえって危険との意見もあり、実使用上のリスクに基づいてシンプルで効果的な仕様とします。

先ず逆接続保護ですが、バッテリーのコネクタは物理的に逆接続できない構造になってますので、一旦正しい配線が行われれば、日常の操作で逆接続になることはありませんので省略します。

過電流はルールにてヒューズ必須となっていますので、ヒューズを正しく選定する事とします。

過電流による発熱及びそれに伴う可燃物の発火の防止が目的ですので溶断時間を1秒とします。

過放電保護は大変重要でLi-Feバッテリーは、たった一度の過放電で充電池としての機能を失い腫れてしまいます。

Li-Poバッテリーの様に過放電後の充電が発火・爆発のリスクに繋がる故障モードはありませんので、ソフトウエアでの検出でも充分です。

バッテリー電圧監視関数を作って、A/Dによって常に監視する様にします。

 

過電流保護
選定手順1:取扱説明書・銘版などからバッテリーの放電レート(連続定格)を確認する。

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選定手順2:取扱説明書・銘版などからバッテリーの定格容量を確認する。

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選定手順3:放電レート(連続定格)、定格容量より連続定格電流を算出する。
連続定格電流 = 放電レート(連続定格)× 1C
上記バッテリーの例では 定格容量1200mAhですので1Cは1200mAとなり
連続定格電流=30×1200mA =36000mA=36A となります。

 

選定手順4:特性表にて1sと36Aの交点にある15Aのヒューズを選定します。

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過放電保護

手順1.お手持ちのマイコンのA/Dコンバータの入力電圧を調べます。

 

手順2.Li-Feバッテリーの定格電圧を調べます。

    満充電時の電圧 = 定格電圧 × 1.3 とします。

 

手順3.満充電時の電圧を分圧する抵抗値を決めます。

    A/Dコンバータの入力電圧 × 0.8 < 満充電時の電圧を分圧した電圧

    かつ分圧抵抗の電流が1mA程度になる様に抵抗値を決める。

 

手順4.安定化電源を用いてLi-Feバッテリーコネクタから満充電時の電圧 を印加して分圧した電圧が”A/Dコンバータの入力電圧 × 0.8”以下かつ近しい値である事を確認。

 

手順5.分圧した電圧をマイコンのA/D入力で観測できるように配線する

 

手順6.安定化電源を用いてLi-Feバッテリーコネクタから2.9V(過放電閾値)×セル数の電圧 を印加して分圧した電圧を”A/Dコンバータにて測定する。

100回測定分をシリアル等でPCに取り込み、エクセルでグラフ化する。

A/D値にバラツキ(A/D仕様以上のノイズ)が無いか確認し、バラツキがなければ平均値を過放電検出閾値とする。

 

手順7.過放電検出値以下になったらモータ出力強制停止&LED高速点灯になる様な関数を作る(過放電警告動作)。

過放電警告動作は無限ループし、自動復帰させない。

 

手順8.必ず定期的に過放電保護関数が実行される様にコーディングを行い、デバッグする。

 

手順9.模擬競技を行い、過放電警告動作を確認する。

過放電警告動作に入ったら直ちに電源を切り、Li-Feバッテリーの電圧を確認する。

Li-Feバッテリの電圧が "2.9V(過放電閾値)×セル数” の電圧 以上であればOK

 

 

当面は過放電警告動作ごとにLi-Feバッテリの電圧を確認して問題ないことを確認する。

 

敢えて回路図やソースを載せていません。

以上の説明でピンとこない方はLi-Feバッテリの使用を避けて下さい。

 

 

出典:溶断時間・溶断電流特性表 KOA CCF1N データシート

 

リチウムイオン二次電池の高エネルギー状態の燃焼実験から原因究明に生かせること

大阪市消防局