隠居エンジニアのものづくり

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ロボカップジュニアにおける指導について (その1 サマーキャンプの回答編)

とあるサマーキャンプにてプレゼンテーションの時間が伸びて私のプレゼンは中止、質問を一つだけ受け付けて終了にしますとなった。

メンターさんからの”ロボカップジュニアで世界に行ける子供を育てる指導法は?”の質問に対して”手伝わない事です”と回答し、続く詳細な説明をする間もなく終了となりました。

時間がないので仕方がなかったのですが、全く意図が伝わらなかっただろうなと思っています。

 何年も経ってますが続きを述べます。

小学校低学年でロボットを始めた子供にとって、TJ3の組立は難しいようです。(今はαエクスプローラーがあるので簡単に組立できますが・・・)

観察していると、ラジオペンチでナットを掴みながらM3のビスを複数の部品を通した状態で締め付ける所が壁になっています。

”そこだけしてあげよう!”、”ナットだけ掴むからビスをしめて!”などの助け舟は指導の範疇かもしれません。

しかしここでは、大人が手伝ったロボットはルール違反になって大会に出れなくなる旨を説明し、組立し易くする方法・工夫を約束して一旦組立を諦めてもらいます。

”できない”原因を詳細に分析すると

①ドライバーとプラスビスを同軸に保つ事ができずにズレてしまう

②小さな手に対してラジオペンチが大きい為にナットを掴む事だけて手一杯

手先の器用さが大人と比べて不足している部分はあるとは思いますが、手の大きさに対して工具のサイズが合っていない事が大きな負担になっています。

これを踏まえて対策を打ちます。

①プラスビスをヘックスビスに変更することで保持を容易にする

②小さい手に馴染む短いBOXドライバを用意する

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対策が功を奏して、組立は順調に進みます。

一切の手助けを受けずに組み立てが、できた事は大変嬉しい様ですし、自信につながっている様子です。

また作り上げたロボットは、とっても大事にします。

この後、プログラムに移行した時にも”何とか動かしたい”と言うモチベーションに繋がって行きます。

 

ロボット本体を大人が一切触らない事を大前提の上で、”ものづくり”や”プログラミング”に必要なセオリーや数学・物理は積極的に教える方が良いと思います。

その際には小学校低学年にも抵抗(お勉強っぽく無い)なく楽しく理解してもらえる”工夫”が必要です。

中学校で習う2進数を例にしましょう。

算数の3桁・4桁の計算ができない子に”円をつけて考えて!”と言うと一瞬で解けると言う笑い話があります。

"1000-350=?"でも"1000円で350円の物を買ったらお釣りはいくら"は暗算で解ける訳です。

実際には存在しない”8円玉”、”4円玉”、”2円玉”と”1円玉”の”おもちゃのお金”を作って買い物ごっごをします。

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私がお店のオジサンをして”13円になります”と言うと、子供が8円玉と4円玉と1円玉を支払う感じで遊んで、戸惑いなく支払える様になったら(3,4回で覚えます)1円から15円を支払うのに必要な数を1か0で記入する表を渡します。

先ず一発で100点満点です。

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これは2進数と言って中学校で習うんだよ(絶対先に行ってはダメですよ)と言うとビックリすると同時に自慢げだったりします。

 2進数の概念がわかっているとレスキューラインで4個のセンサを使うプログラムが容易に理解できます。

新しい知識がロボットを強くすると感じたり、仕組みを知れば思い通りにロボットを動かせると言う体験をした子供たちは”学校のお勉強”はともかく”ロボットに関する知識”には貪欲になります。

 

要するに手伝わないで、子供自身の手で”てきる”環境を整えてあげる事が大切です。

 

余談ですがヘックスビスの件は2008年にあった実話ですが、初心者ではなくメンテ性が良いとの認識でヘックスビスは上級者に流行っていきました。

 

 

Fsion360のCAMで歯車をつくる (2回目以降の手順)

前回は初回設定込みでしたので、今回は2回目以降の手順について解説します。

 

”デザイン”から”製造”へ移行して”設定”→”新しいセットアップ”を左クリック

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操作タイプ 切断に設定、 ”方向”にて加工軸とZ軸を合わせて”OK”を左クリックします。

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”切断”→”2D輪郭”を左クリックすると”2D輪郭”が開きます。

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工具”選択”を左クリックします。

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Local Library レーザーカッターを選択して、右下の”選択”を左クリックします。

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”形状”の”輪郭選択”を左クリックの後、モデルの切断箇所を選択します。

”サイド”を”外側から開始”に設定します。

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”パス”→”補正タイプ”を”コンピューター”に設定(デフォールトは”制御機”)

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”OK”を左クリックして”2D輪郭”の設定は完了

DXFファイルにルールパスの概念は含まれないのでシミュレーションは無視します。

そのままポスト処理を左クリックします。

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ポスト処理設定画面が開きます。

前回の設定が残っているので名前のみ入力して、”ポスト”を左クリックします。

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ファイルを開く画面は”ESC”キーでスキップ、これでDXFファイルの出力は完了。

 

”保存”を左クリックすると作業は終了です。

 

 

 

Fsion360のCAMで歯車をつくる

 

レーザー加工機の利点は切削時にワークに非接触な事と、刃幅が小さい事です。

 

加工機の性能的にはモジュール0.5の歯車を製作できそうですが、Fusion360のスケッチからのDXFファイル出力はモデル寸法と同じです。

レーザー加工機はこのDXFの線の中心にレーザーを当てるので刃幅分余分に切断します。

刃幅が0.1mm程度(余分に削るのは片側0.05mm)と小さいので普段の工作では無視できますが、モジュールが0.5だと歯の形が1割も異なる感じになります。

見た目にも使い古しの痩せたギヤの様に仕上がります。

綺麗な歯車を製作する為には、レーザー加工機用のDXFファイルをCAMに出力させる必要があります。

今回はCAMの使い方について解説します。

 

”デザイン”から”製造”へ移行

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”設定”→”新しいセットアップ”を左クリック

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”方向”のモデルの向きを”Z軸 平面、X軸を選択”にしてモデルの加工面を左クリックする

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この様にZ軸がレーザー加工の軸と同じになればOK

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”マシン”の”選定”を左クリックすると”マシンライブラリ”が開きます。

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”フィルタ”の”性能”欄のチェックを切断のみにします。

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Fusion360ライブラリ”の”Autodesk”を選択します。

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中央のアイコンを左クリックすると右側に情報が表示される。”選択をコピー”を左クリックします。

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マイマシン→ローカルを選択して”貼り付け”アイコンを左クリックします。(貼り付けをしたら次回からこの作業は不要です)

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中央のアイコンを左クリックして右下の”選択”を左クリック

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”OK”を左クリックして設定終了

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”切断”→”2D輪郭”を左クリックすると”2D輪郭”が開きます。

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”工具”の”選択”を左クリック

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”工具を選択”画面が開くので”タイプ”の”レーザーカッター”にチェックをいれます。

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Fusion360ライブライ”→”Sample profile Tool(Metric)”→”レーザーカッター”アイコンを左クリックすると左側に情報が表示されます。

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”工具をコピー”を左クリック

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”Local"→”Libraly”に貼り付け(貼り付けをしたら次回からこの作業は不要です)

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”レーザーカッター”のアイコンを左クリック

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”工具を編集”アイコンを左クリック

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”刃物”を左クリックし、”切り口の幅”を自分のレーザー加工機の刃幅に修正(手元のbeamoは0.1mmで良い感じでした)→”承認”を左クリック(修正内容は保存されるので以後は修正不要)

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”選択”を左クリック

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この様にレーザーヘッドを含む画面になります。

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”形状”の”輪郭選択”を左クリックの後、モデルの切断箇所を選択します。

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”サイド”は”外側から開始”に設定します。

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”パス”→”補正タイプ”を”コンピューター”に設定(デフォールトは”制御機”)

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”OK”を左クリックして”2D輪郭”の設定は完了

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この様な画面になっていればOKです。

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”シミュレーション”アイコンを左クリックすると動画コントロールアイコンが下に表示され、再生ボタンを押すとレーザーヘッドの動きが見れます。

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”ポスト処理”アイコンを左クリック

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ポスト処理設定画面が開きます。

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”ポストコンフィグ”のプルダウンメニューを”切断”、”Autodesk”、”AutoCAD DXF / dxf"に設定

DXFファイルを保存したい場所を”出力フォルダ(O)”にて設定

”プログラム設定”内のプロバティ”only cutting"を”はい”に設定(”いいえ”だとツールの移動経路なども一緒に出力される)

”プログラム名と番号”にDXFファイルの名前を入力(プログラムコメントは空欄でOK)

”単位”を”ミリ”指定

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”ポスト”を左クリックすると以下の画面になります。

”保存”を左クリックすると作業は終了。

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出来上がったDXFファイルを開く方法を聞いてきますが無視してOKです。

出力されたDXFファイルをレーザー加工用ソフトに読み込ませて加工すればOKです。

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当ブログでは、無償かつDXFの再現不具合が殆どない(フィレット箇所が部分的に直線になる等の不具合)LibreCADをお勧めします。(無償ですが登録は必要です)

いつものスケッチからDXFを出力する方法(白線)と今回のCAMプロセッサからDXFを出力する方法(赤線)をLibreCADで重ねて見ました。

外形となる歯の部分は赤線が外側、穴は白線が外側になっており、仕上がり寸法の誤差を軽減する様に刃幅分オフセットしているのが分かります。

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実際にベアリング入りモジュール0.5 - 36Tの歯車を”FM Gears”にて3Dデータを作り、製作してみました。

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左:レーザー加工機によるギヤ(アクリル3mm厚)・右:タミヤの36-12ギヤ

かみ合わせも良く、1回転する過程で特定の角度で音が変わることもないので偏心なく、滑らかに回ってると思います。

今まで、ハブとギヤを結合させる場合はギヤを発注して追加工していましたが、この方法だとハブとの接合部を予めギヤに持たせる事ができるので、組み上がりのトータル精度が上がります。

シャフトにイモネジで止めるギヤは金属製を購入しますが、中間ギヤは自作で済ませる様になり、設計自由度と経済性が上がりました。

ギヤ1枚1分程度で切削完了するので、切削待ちのストレスがなく、色々作ってしまうのが難点のような・・・

 

 

超音波センサ (問題の原因を状況確認・推定する)

発生する問題に対して的確な対策を行う事は難しいものです。

例えばRCJサッカーで起こる以下の問題は、ある程度経験を積んだ方々には認識されていると思います。

・”サッカーフィールドの四隅はアウトオブバウンズになり易い”

・”練習中は完璧なのに本番(試合中にアウトオブバウンズしてしまう)に弱い”

これを

”状況の分析” → ”仮説設定” → ”仮説検証” → ”仮説の確からしさ評価”

の手順で根本原因に迫って見ましょう!

1.状況の分析f:id:Blackbox_crusher:20210509210556p:plain

頻度の高い隅っこは直近にある壁が2面、近接するロボットは3台、時々起こるシチュエーションでは直近にある壁が1面、近接するロボットは2台、ザックリ発生頻度を大中小と設定すると下表の様になります。

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2.仮説設定

近接するロボットの数と発生頻度が相関していることが分かります。

超音波センサで左右の距離を測定して、広いほうが内側と判定するアウトオブバウンズ処理をしているとすれば、問題の発生は距離測定のエラーと言う事になります。

距離測定のエラーだとすると

・壁側の距離測定結果が実際より長くなる

・内側の距離測定結果が実際より短くなる

の何れかの発生、もしくは両方の発生による可能性があります。

 

ここで超音波センサが距離を測定する”しくみ”に基づいて考えて見ましょう。

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非常に短い音をスピーカーから出して対象物に反射して帰ってくる音をマイクで拾うイメージです。音出しからマイクが音を拾うまでの時間から距離を算出します。

最大測定距離3mのセンサは距離の2乗に反比例して弱くなる音をマイクで拾える強さで音出しをしていますので1.5mの壁からの反射音はセンサにとっては充分過ぎる強さと言えます。
当然ながら隣のロボットが出した音も余裕で拾える事になります。

もし、センサが音出しした直後に、隣のロボットのセンサが出した音を拾ったら対象物の距離より短い測定結果になります。

センサは最初に音を拾ったタイミングで測定を完了するので近接するロボットのセンサがノイズ源であればエラーは短くなる方向にのみ発生します。

”壁側の距離測定結果が実際より長くなる”ことは無いと言うことになります。

 

3.仮説検証

近接するロボットの超音波センサがノイズ源で、これにより距離が短い方向に誤った距離になると仮定したので、検証実験を行います。

3個の超音波センサを並べて1m先に壁を置いて測定を行います。

1個は距離測定結果をシリアルアウトし、残りの2個は別のマイコンボードで独立して繰り返し同じ測定間隔で動作させます。

1台 3台
100 33
100 100
100 30
100 33
100 100
100 30
100 36
100 100
100 29
100 34

御覧の通り1台単独動作では10回測定の結果は全て100cmですが、3台稼働では29cmに見えることがあります。

注意して頂きたいのは、今回の実験において3台の測定繰り返し間隔が正確です。

実際には各ロボットの繰り返し周期は異なりますし、各々が非同期ですので実験の様に規則正しく3回に1回は正しい値が得られると言う訳でも在りませんし、タイミング依存ですので最小測定距離の3cmに見える事もあり得ます。

 

4.仮説の確からしさ評価

実験結果は練習中の様な1台では距離測定のエラーが起きない

複数台時に超音波センサの距離が短く見える測定ミスが発生する。

” 内側の距離測定結果が実際より短くなる”為に内側距離<壁側距離となってアウトオブバウンズを起こす。

仮説に矛盾はなさそうです。

前後の超音波センサが稼働していると隅っこに居る時に2枚の壁の多重反射が拍車をかける可能性もありそうですね。

 

ノイズ除去で真っ先に思いつくのは平均化(複数回測定して平均値を求める)ですが、この場合は”複数回測定して最大値を求める”手法が適切です。

センサの測定原理を理解して適切な精度向上の工夫を行う事例として見て頂ければ幸いです。

 

 出典:PING Ultrasonic Distance Sensorデータシート

 

バックミラー型カメラ

この記事の背景はこちらを御参照ください。
https://blackbox-crusher.hatenablog.com/entry/2021/03/29/020350

 

”必要もないのに全方位センサを開発したりとか・・・”
では、必要なセンサとは?

 

センサへの要求仕様は戦術によって異なります。
つまり、戦術毎に最適解は異なる事になります。
外乱耐性・フィジカル重視戦術(OYA-G 2021モデル)を前提にすると、センサに求められるのは以下の通りです。
●壁より上の背景がカメラに映らない様に視野制限(ノイズ低減)
●解像度の維持(シグナル温存)
●リニアリティの維持(画像を歪まさない)
●後方視界の確保

この要求仕様の最適解が”バックミラー型”です。

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ミラー組立調整用の穴が天板に開けてあります。

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ミラーの構成が見える様に天板を除いた図です。

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実物です。

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Pixy2からはこの様に見えます。

方位はもちろん、距離も正確にでるので超音波センサは非搭載です。

バックミラー型は、この様に歪みなく画角の前後比率を自由に変えれます。

OYA-G 2021モデルは、後方視界はゴールの方位確認のみに使用するので、前方視界を大きく設定しています。

もちろん、50:50にしてボールを補足する画角をPixy2ノーマル比2倍にする事もありです。

 

動画は信地旋回(左25%・右0%これ以上遅くならないので見にくいですが・・・)した時のPixyMonの画面です。

完璧に視野制限されていて、150mm(設備の更新が出来てないので低いままです)の壁の上側は一切写っていないのが確認できると思います。

目が回るので御注意下さい!

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RoBoRoBo Summer Camp 2018にてお披露目した後、オープン大会・ブロック大会でのエキジビションマッチに出しているので、今までにバックミラー型のロボットを幾つか見かけました。

製作者に話を伺うと、どうやらミラーの組立が難しい様子です。

ロボットを床に置いた状態でカメラの映像を見ながらミラー調整をするのは難しいと思いますので、調整の様子を動画にしましたので参考にして下さい。

ミラーをテープで仮止めして、調整用穴から吊り下げます。(カメラ画像の真ん中が黒いのは吊り下げに使用した黒テープ)

希望のアングルになったところで吊り下げに使っているテープを固定して接着作業を行います。

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どうしても仮止め・接着の工程が上手くいかない方は、設計が少し複雑になりますが、ヒンジなどで稼働式にしておく方が早道かもしれません。

 

 

ラインセンサについて (その2 サッカーリーグ編)

今回はサッカーリーグ編です。

ジャパンオープンで使用されていたフィールドの白線はカーペットの裏面に白色塗装を行っているので光沢があります。

一方緑色のカーペットは繊維を染色した物なので光沢はありません。

高い値が欲しい白線に鏡面反射光が大きくて、低い値が欲しい緑色カーペットには鏡面反射光が小さいわけですから床面に垂直に取り付ける方がS/N比が良くなります。

白線に白色カーペットを使用している場合も鏡面反射光を考慮する必要がないので垂直取付で問題ありません。

レスキューチャレンジと違って取付に特別な工夫は不要ですが、緑色のカーペットを低い値にするには色の性質を利用する必要があります。

製品を着色する為に塗料(染料・顔料)が使われます。

人間の目が”色をどのように見ているか”についてはwebに分かりやすい解説が沢山ありますので、検索してみて下さい。

ここでは、余り解説されない色の話をします。

 

では緑色塗料の目的は?

答えは”人の目に緑色に見える事”です。

言い換えれば、赤色より波長の長い赤外領域で光を反射しようが吸収しようがどうでも良い訳です。

下図はイメージし易いように青色、緑色、赤色塗料の波長に対する吸収を示したものです。

吸収すれば”0”、全く吸収せずに反射すれば”100”としています。

ご覧の通り、一般的な塗料は赤外領域での吸収は殆どありません。

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IRフォトインタラプタの940nmの波長付近では吸収がないので緑色のカーペットの反射光量は下がりません。

白色LEDでは500nm付近の反射光量がガッツリあるので、ある程度の値が出てしまいます。

赤色LEDを用いてれば500nm付近の反射光量”0”なので充分低い値になります。

赤色LEDを用いるとラインセンサの投光がカーペットに吸収されるので、漏れた光で相手ロボットのビジョンセンサに妨害してしまう事も防げます。

この動画は実際に赤色LEDラインセンサを暗所で撮影したものです。

持ち上げないとラインセンサの光を確認できない程、光が漏れていない事が分かります

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このセンサの値は緑カーペット0%、白線60%(コンパレータ割込みを用いている都合でセンサ感度を控えてますが、白線100%に調整した場合カーペット3~5%程度でした)と安心して閾値を決めれます。

 

赤外線の話ついでに、少し横道に入りますが、前出の通り、一般の黒色の塗料には940nmに吸収はありません。

赤外線の内部迷光を嫌う光学製品の為に”カーボンブラック”と言う赤外領域に吸収のある塗料は存在しますが、高価なので一般製品の黒色パネルなどには使用されません。

つまり、パルスボールから見れば、壁、青色ゴール、黄色ゴールは鏡も同然です。

ライトウエイトのロボットがゴール際や壁際でボール追従の不調に陥るのは、ボールからの直接光なのか壁やゴールからの反射光なのか区別がつかない状態になるからです。

これを解決するには光学知識の応用が必要で、ライトウエイトは軽・薄・短・小・光学と色々な技術の総合力が問われます。

もちろんオープンにはオープンの難しさがありますので、”初心者にとってライトウエイトは難しい”と言っているだけですので誤解のないように!

ちなみに初心者講習会はオープンで行っています。

2007年当初はパルスボールではなかったので、蛍光灯と電球の違いや、距離2乗に反比例する件、IRセンサの視野制限を説明する為のイラストを苦労して描いたものですが、オープンなら色を学習する手順を教えてXで方位、Yで距離が分かりますで、ボールを追ってゴールに向かうプログラムまで行けますし、ハードもラインセンサとPixy2をポン付けするだけで性能がでるので進行によどみがありません。

ご参考まで。

ラインセンサについて

 サッカー、レスキュー、OnStageの各リーグにて使用されるラインセンサは入門用ロボットに必ず付いていると言って良いほど、基本的なセンサです。

ラインセンサは性能を引き出すのが難しいセンサです”と言うと、意外に思うかも知れません。

光を用いるセンサは、光の性質を理解して適切な取付(対象物との距離・角度)を行う事が重要です。

 

散乱光と正反射光

皆さんは白色と銀色の区別が付くと思いますが、これは人の目がとても優秀な光センサ(小さな差の判別や数値化は光センサに軍配があがります)なので、紙などの散乱光が優勢なものを白色、鏡など正反射が優勢なものを銀色と判別しています。

ラインセンサには散乱光と正反射光の区別が付きません。

例えばジャパンオープンで使われるレスキューラインのタイルは白色の部分もライン(黒色)も光沢がありますので、ある程度の正反射光が含まれます。

散乱光は白色と黒色の反射光量に大きな差がでますが、正反射光はあまり差が生じません。

投光部と受光部が別々に配置できる場合ですが、左の図の様に配置すると正反射光によって常に大きな値になり、これに埋もれる状態で散乱光の変化を見る事になります。

 

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右の図の様に配置すると散乱光の変化のみを見る事ができます。

投光部と受光部がセットになっているラインセンサの場合、床に垂直に取り付けると正反射光を見てしまいます。

取付に工夫が必要ですが3度程、傾けて取り付けると白黒の値の差が大きくなります。

来期のロボットを設計する前にセンサ位置の最適条件について実験してみては如何でしょうか。

  

 

 

出典:コニカミノルタ株式会社 色と光沢