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CFRPの切削加工

CFRPの切削加工は大変危険です!

粉塵による健康被害

アスベスト訴訟の和解手続きに関するTVCMが頻繁に流れているので、アスベストの粉塵による健康被害についてはご存じかと思います。

粉塵起因の病気の中でも”悪性胸膜中皮腫”はⅠ期の5年生存率14.6%と致命的かつ25~50年の潜伏期間がある恐ろしい病です。

この潜伏期間によって健康被害の顕在化までの長きにわたり、具体的には2006年9月1日労働安全衛生法施行令の改正によるアスベスト製造、輸入、使用が禁止に至るまで高機能建材として多用されました。

 

健康被害を起こす物質

アスベストの他にもエリオン沸石の粉塵曝露も悪性胸膜中皮腫の原因とされます。

アスベストとエリオン沸石の共通点は

〇肺胞に達する微粒子
〇針状(繊維状)
〇高い耐久性

であり、発症のメカニズムは繊維状の物質が肺に刺さり、絶え間なく細胞を刺激し続ける事で起こるとされています。

この知見によって針状の構造と高い耐久性を持つ微粒子の曝露は”悪性胸膜中皮腫”の発症を疑う必要が生じました。

最先端技術としてweb露出度が高い”多層カーボンナノチューブ”が”発がん性”とセットで論じられるのはこの為です。

 

CFRPの粉塵

ではCFRPを切削加工した時の粉塵はどうでしょうか?

恐らく”CFRP”、”健康被害”で検索しても殆どHITしないと思います。

前出の通り、アスベストで得られた知見によって、針状の構造と高い耐久性を持つ微粒子の曝露が発生するシーンでは対策が行われています。

厳格に対策されているから健康被害が発生していないと考えるのが妥当でしょう。

”webでHITしない”イコール”健康被害は起こらない”は早計です。

ここではCFRPの切削粉塵が肺胞に達する微粒子なのかについて考察します。

国際基準であるISO 7708により以下の様に人体への侵入度合により吸引性粉塵、咽頭透過性粉塵、吸入性粉塵(肺胞への侵入)の3種類に分類されています。

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空気動力学径は針状などの粒子を終末沈降速度が等しい密度 1 g/cm3 の球の直径として考える方法で、カーボンファイバーの直径7μm長さ10μmの粉塵を空気動力学径7μmと仮定して赤線を入れました。

咽頭を超えて気管支・肺に70%以上が、肺胞にも5%以上が到達する事になります。

逆に咽頭を超えない為には空気動力学径30μm以上は必要ですので直径7μmでは相当の長さが必要な事が分かります。

カーボンファイバーが高い耐久性を持っているのは説明するまでもないですね。

つまり、健康を害する要件は揃っていると言う事になります。

 

個人の自由?

校舎や体育館にアスベストが使用されている為に使用禁止になり、アスベスト除去作業や建て替えになったと言う経験がある方は少なくないと思います。

アスベスト被害の特徴の一つが採掘や製造に関わった人のみならず、使用された建物を使用しただけでも発症する事です。

つまり、この手の粉塵は極めて微量であっても危険と言う事です。

個人宅で切削するば、家族が、学校で切削すれば、その場を共有する人全員が危険と考えるべきでしょう。

”リスクを承知でやっているので個人の自由だ”は通用しません。

 どうしてもCFRPでロボットを作りたい方は、外注するか、CFRP材を液体に沈めて加工するなど粉塵が発生しない加工方法を工夫して下さい。

 

 

出典:

独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 

粉じんの吸入ばく露による健康障害を評価する


日本癌治療学会 がん診療ガイドライン

悪性胸膜中皮腫