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ロボカップジュニア レスキューライン 製作手順・動作確認

はじめに

ロボカップアジアパシフィック2021あいち”で頂いた質問の続きと言うよりは、大会当日の練習用アリーナでの調整風景を見て、色々気になった事についてロボット作りの流れで書いてみました。

 

ルールの理解

ロボット製作手順の最初は仕様を決める事です。

これには、ルールの理解が必要不可欠です。

レスキューラインは他のライントレース競技と異なり、障害物競走と言ったところでしょうか。

坂を昇り降りしたり、20mmバンプを超えるギヤモータのパワーとタイヤグリップ性能が要求されます。(最近のルールでは10mmバンプがMAXのようです)

十字路・T字路の緑色マーカー有無など”組み合わせが複雑な分岐の攻略”が、重要になります。

先ず、”分岐と緑色マーカーの検出を、どの様なハードとソフトで行うか?”

をしっかり考えて設計します。

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分岐に斜めアプローチしてしまう事を考えると、手前の緑色マーカーを見落とさずに奥の緑色マーカーを誤認識しない方法は、結構難しいかもしれません。

〇画像処理で判別する

〇分岐に直交するようにロボットの姿勢を制御してから緑色マーカー読みする

〇短い距離でラインと平行に走るように、ライントレースの追従性を極める

など、仕様決めの醍醐味ですね。

被災者の検出・救出方法はロボットの特徴になる部分ですので、しっかりアイデア出ししましょう。

ロボットの製作

大別すると、ライントレース部(車両部分)と被災者救出部に分かれます。

ソフト係・ハード係に分かれている場合は、先ずライントレース部を製作してソフト係がプログラム開発できる状況を早期に確立しましょう!

ハードのチェック

前進・後進・左右旋回をおこなって、足回りに問題が無い事を確認します。

PWMなどで速度制御を行う場合はフルパワーが出ているか?、70%・50%・30%など意図したパワーに制御できているか?を確認します。

シリアルモニターなどでセンサの値が正しいか?・安定しているか?を確認します。

個々の動作を確認しないで、ソフトを含む評価をすると手戻りが大きくなるのでしっかり確認します。

 

部分動作確認

動かして見てハードの変更が必要な場合もありますので、ギャップや障害物など個々の課題に関する部分のソフトを作って動作確認をします。

ここでは3回連続で通過できればOKとします。

この際よく起こるのが”スロープを登れない”ですが、タイヤのグリップ不足やパワー不足などのハードの要因と坂の登り口でセンサとラインの距離が離れる事によるソフトの誤動作を切り分ける為に、100%前進だけの単純なプログラムで坂を登れるか否かを確認します。

”登らない”・”転ぶ”なら早々にギヤ比の検討や重心を下げるなどの工夫をして、ハードの強化を行い問題を解決します。

ハードの性能不足をソフトで解決する事はできないと思って下さい。

ソフトで救えるのはハードの性能がギリギリ足りている場合だけです。

シーソーが向こう側に倒れた勢いでロボットが転ぶ場合に、”ロボットがシーソーの軸付近に近づいたら微速前進してシーソーの倒れる勢いを弱くして転倒防止をする”がソフトで救った例と言えます。

ハードの性能が足りていない”登れない”、”シーソーの傾斜で転ぶ”はソフトでは救えません。

 

全体粗調整

コース全体を走行させてカーブ立ち上がりのギャップなど、組み合わせで起こるコースアウトの原因を見極めて、対策を打ちます。

ここでも3回連続で通過できればOKとして、ソフト全体の流れをしっかり作り込みます。

 

再現性評価

全体粗調整ができていれば、大会で得点走行ができる状態です。

練習で通過できた所が、得点走行で進行の停止になる事があるので”アリーナには魔物がいる”と言われます。

再現性の向上によって魔物は退治する事ができます。

”3回連続で通過できればOK””10回連続で通過できればOK”に変えると再現性の低い所がNGになります。

これ以上になるとミスするまでに時間が掛かるのでビデオカメラで撮影しておいて、動画でミスに至る状況確認をします。

この際、プログラムのどの処理が行われているのかをカメラに記録できるようにデバッグ用LEDを用います。

この動画では、左LED点灯で緑色マーカーの検知を示して、左LED消灯までが緑色マーカーに従った旋回動作、左右LED点灯で緑マーカー無しの分岐検知を示して、直進通過は20mm前進して消灯、直角コーナーと判断した場合は1.5秒間”分岐検出無しの単純な比例制御動作”を行って消灯する様にしてあります。

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ロボカップジュニア レシュキューライン 練習走行 (途中27倍速)

スタートから58分後に直進通過すべき分岐を右折するミスを起こしますが、原因はバッテリーの電圧低下でした。

 

デバッグ用LED:ポートに空きがないロボットでも評価で使用にないセンサの代わりに接続できる様にコネクタとピンアサインをマイコンボードに合わてあります。

LEDを点灯させる前提になっていないコネクタに接続するので、1kΩの電流制限抵抗を入れてあります。

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出典:2022_RescueLine_Rules_draft01.pdf