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ロボカップジュニア レスキューライン 精密度と正確度


はじめに
ロボカップアジアパシフィック2021あいち”で頂いた質問の続きです。

精密度と正確度はどちらが大切ですか?

この質問を直球で受けた訳ではありませんが、質問内容を要約するとこんな感じです。

”どちらも必要ですよね?”と言う答えにくい類の質問ですが、”ものづくり”では、答えは明確で”先ず一定の精密度を得る事が最優先”です。

 

精密度と正確度

例えばロボットに超信地旋回で90度ターンをさせて、ターンを終えた所で角度測定を行うとします。

ロボットAロボットB2台を5回測定にて評価します。

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この表をみるとロボットBの方が目標値90度に近いターンをしているので優秀?

となるのですが、次の表を見て下さい。

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5回のターンのバラツキはロボットBの方が4倍も大きい事が分かります。

精密度はバラツキの大小、正確度は目標値との誤差の大小を表します。

つまりロボットAは精密度は高いが正確度は低い、ロボットBは精密度は低いが正確度は高いと言う事になります。

ロボットBを1回動かした結果で調整をすると、9°足りないので”+9°”の調整を行ったら2回目のバラツキが10°多めに動くので角度測定の結果は”100°”になります。

この結果を基に”10°”少なく調整すると3回目は2回目に対して9°少なめに動くので100°の結果に対して19°少ない81°になります。

いつまで経っても調整は収束しません。

ロボットAは30度多くターンしているので時間制御なら時間を短く、角速度制御ならセンサの積算値を少なくする事でバラツキ3°(120°ターンでバラツキ4なら制御時間や制御値が小さい90°ターンではバラツキ3°が期待できます)で90°ターンに調整する事ができます。

精密度の高いロボットの方が良い事が理解頂けたのではないでしょうか。

 

ロボットの動きの評価では”精密が高い”と同義の”再現性が良い”の方がイメージし易いと思うので、出前授業などでは”再現性の良いロボットに仕上げましょう!”、バラツキはある程度必ずあるので”最低でも3回同じ動作をさせてから調整値を変えましょう!”が口癖になっています。

 

実際の例

ロボカップの指導に際して実際に競技の何が”難しいのか?”の理解や、公正に競技を行う為にフィールドや会場設営で注意するべき点の洗い出しをする為に”お手本ロボット”を作っています。

このロボットを評価・チューニングをする過程で起きた実例を挙げて説明します。

以下の調整を終えて、実際に緑マーカが両方にある行き止まりを判断してUターンができるかの評価を行います。

〇比例制御ゲイン調整済みでライントレースが滑らかにできる

〇角速度制御で超信地旋回180°が再現性良くできる

〇緑マーカを確実に認識できる

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再現性良くターンの度に大きく左側にズレて右旋回でライン中央に戻る動作が観測できます。

この原因はDCモータに付き物の”回転数やトルクのバラツキ(個体差)”と考えます。

旋回時のパワーは右側モータ、左側モータの何れも100%ですが、左側を弱める調整を行います。

ここが大事なポイントですが、原因と対処方法は現時点では推論ですので99%・98%・97%と言う風に詳細に詰めるのは後回しです。

先ず、推論が正しい事を確認する為にガッツリ大きな調整を行います。

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今度は再現性良くターンの度に若干右側にズレて左旋回でライン中央に戻る動作が観測できます。(調整前とは逆方向にズレる傾向を確認)

これで原因と対処方法は正しく、調整の効果が確認できましたので微調整に移ります。

変化が見やすい様に比較動画を作成しました。

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 上:調整前  下:仮調整後

実際には、この状態でも問題が起きる状況では無いと判断して仮調整のまま、次の評価・調整に移りました。

全ての項目を評価して問題が起きない程度に調整が完了してから、微調整に移ります。

得点走行では特定の動作が完璧でも、未調整の部分が残っていると、そこで競技進行の停止になってしまいます。

調整の仕上がりに優・良・可・不可があるとしたら、”優9不可1”より”良10”の方が良いと言えます。

コースが簡単なら”可10”にも勝機があるかもしれません。

 

再現性を意識して、安定したライントレースができるロボットを作りましょう!