はじめに
今回は機構設計について解説します。
先ずは設計計算することに興味を持って頂きたいので、計算をすると ”おいしい” とか ”得をする” と思ってもらえる事に主眼をおいて、計算の中身については解説しない事にしました。
ギヤモータの性能(選定)
同じギヤモータとバッテリーを使えばロボットが重いと加速が悪くなって最高速度が落ちます。
ロボットが軽いと加速が良くなって最高速度が上がります。
この辺は感覚的に分かっていると思います。
つまり、ロボットの重量と目標とする最高速度と加速度が決まれば必要なギヤモータの性能が計算できると言う事です。
計算例は以下の様になります。
この計算から得られた、ギヤモータの必要トルク時の回転数を計算した結果が以下です。
マクソンモータRE16 (118715) には最大連続トルク44.5g・cm(4.36mNm)と言う制限があって、計算結果の91.4g・cmでは焼けてしまいます。
計算書は4軸オムニロボットが斜め移動時に2軸駆動になる最悪値を想定しているので4軸駆動では何とかギリギリ焼損は、避けれる状態でしょう。
しかしながら、この計算結果は停止時から最高速までの加速期間に必要なトルクなので、(一般的アプリケーションでは起動時に気を付ければ良いのですが)サッカーではボールを挟んでの押し合い、ライン際で正転・反転を短時間に繰り返すなど、計算の前提よりも厳しい停動トルクに近い状態が連続する事が頻発します。
試合で押し合いが長く続くなど、相手チームとの相性によっては試合中に焼損する可能性は充分あります。
これらのシーンでは、最大出力で連続運転することができるRC-260の方が適しています。
お勧めギヤモータ
以下の性能をお求めの方に " タミヤ遊星ギヤーボックスセット " をお勧めします。
〇 低価格 (web価格 1,200 円 (税込))
〇 カーバイトブラシモータ使用・ギヤ比1/16、1/20、1/25、1/80、1/100、1/400設定可能(適正負荷にて焼損リスク小)
タミヤ遊星ギヤーボックスセットはタミヤ工作シリーズでは異例のカーバイトブラシモータ搭載ですのでデフォールトでチューンモータ搭載と言えるでしょう。
ダイセンさんのプラスチックオムニホイールが取り付け可能です。
設計計算の実証
モータマウントとベースを切り出すのにレーザー加工機なら数分なので、4軸オムニ型ロボットを作って、動作確認してみました。
固定不要(非接触切断なので置くだけでOK、加工完了後に両面テープと格闘することもありません)バリ取り不要で加工時間が短いのはアイデアを試したり、治具を作ったりの敷居が低くなります。
この様に ” 実験結果を載せる為に4軸オムニロボット作ろうか ” となったのもレーザー加工機のおかげです。
タミヤ遊星ギヤーボックスセット(ギヤ比1/80)とプラスチックオムニホイールの組み合わせで直径215mmのベースに余裕で配置できました。
次に " 前→右→後→左→前 " の繰り返しを0.3s毎で行うプログラムにて機動性を確認します。
〇 Ni-MHバッテリー7.2Vで実験を行ったので、設計計算の6Vのグラフに合わせてパワーを80%に制限してあります。
〇 モータの個体差を補正していません。
7.2Vフルパワー ( 100% ) でジャイロセンサ補正制御やモータ個体差補正を行った場合の速度と " 動画の動き " は概ね同じ感じだと思います。
白線を検知して制動をかけた時に、アウトオブバウンズしない速度を、若干超えている様子なので、充分なパワーと言えるでしょう。
コラム1
RE16は4.5W、RC-260RAは0.4W~15W(巻き線仕様が多数あるので幅があります)の様にモータの出力は電力表示されます。
DCモータは電圧に回転数が比例するので、電圧の高いモータが良いモータであるかの様な錯覚をしますが、電圧×電流=電力ですのでバッテリーの電圧に合わせて正しく選定すれば良い訳で、わざわざ電圧の高いバッテリーを使用する必要はありません。
メーカーは電圧毎、用途に適した出力のモータを用意しています。
例えば電動ラジコンカー用のモータは6V~7.2Vですが、2kgの車体を時速40km以上で走行させるパワーを持ったモータが存在します。
この電動ラジコンカー用は1/27~1/8(メジャーなスケール)と幅広くサイズ違いがあるので、1.1kgのロボットに搭載可能なサイズのモータを探すことができます。
つまり、6V~7.2Vモータは12V系に比べて圧倒的に選択肢が多くて入手性が良く、最適な選定を行う事ができます。
コラム2
設計計算ができないと、高性能モータも本来の性能を出せないだけでなく、短命に終わります。
マブチモータRC-260が効率50%を少し超える程度なのに対して、RE16は効率80%に迫る高性能モータである事に揺るぎはありません。
DCモータは永久磁石と電磁石の反発力によって回転力を得ます。
永久磁石と電磁石の隙間を狭くすれば反発力を強くすることができ、効率が良くなります。(コイルの真円度や偏心など、部品精度の要求は高く、コストがかかります。)
実はこの高効率を得るためにRE16は隙間なく永久磁石と電磁石が詰まった構造になっていて、熱を外に捨てるのが苦手になっています。
コンパクト高効率と連続的に高出力を出すのはトレードオフの関係になっていると言う事です。
マクソンモータの名誉の為に注記しますが、最大連続トルク44.5g・cm(4.36mNm)は最大効率時のトルクですので、セオリー通りに正しく設計すれば焼損しませんし、コアレス巻線による滑らな回転、高い制御性を得られます。