初めて基板作りをしたのは中学生の頃で、市民バインドトランシーバー(420MHzではなく27MHzです)を自作したいと言う理由からでした。
細いパターンは腐食気味で色が悪く信頼性は怪しいものがありました。
服に付いたエッチング液は全く落ちず、親に怒られましたし、説明書の通り廃液処理をしようと思うとセメントが必要で街中を自転車で走り回って苦労して入手(ホームセンターが無い時代でしたので・・・)した記憶があります。
正直エッチングには良いイメージがありませんでした。
こんな具合で切削での基板製作のノウハウ構築に打ち込み、切削一筋10年が経つのですが、レーザー加工機の導入で一変します。
先ず加工時間がとても早いことに加えて、定番のエッチング液である塩化第二鉄をクエン酸・食塩・過酸化水素水に代替できる事が、エッチングへの負のイメージを払拭してくれました。
エッチング液の作成
100円均一ショップなどで売っている”厚手のチャック付きポリ袋”とプラスチック容器を準備して下さい。
エッチング液に銅が溶けた状態は毒性がありますので、安全の為、ゴム手袋を準備して下さい。
エッチング液は、塩:2g クエン酸:8g オキシドール:40g を混ぜ合わせて作ります。
いずれも入手性は抜群で安価です。
化合物を作る目的ではなく、それぞれの相互作用を利用するだけですので、概ね比率が合っていて飽和せずに溶けていればエッチング液として機能します。
この点でもお手軽な方法と言えます。
塩化第二鉄と同じくエッチング作業後の廃液は、そのまま捨てれませんので廃液処理が必要です。
こんな感じてチャック付きポリ袋の中にエッチング液を作ります。
混ぜ合わせて、全部が溶け込んだら50℃~60℃に湯煎します。
基板は四隅をサンドペーパーなどで丸めておくことをお勧めします。
エッチング液が温まったら、湯煎に使ったお湯を捨ててチャック付きポリ袋に基板を入れて、しっかり封をします。
エッチングの過程で膨らみますので、空気はなるべく入れないようにして下さい。
この様に、かなり激しく”シャカシャカ”振るイメージです。約5分でエッチングは完了します。(2分程でエッチング液が青みががってきます)
静止状態でもエッチングは進むのですが、反応の過程で酸素が発生して泡が付着します。この泡が意外と強力に付着したままになるになるので、腐食ムラができて仕上がりが悪くなります。
銅箔が完全に溶けると向こうが透けて見えるので、透過光で確認すると進行具合を確認できます。
透明だったエッチング液は銅が溶出して緑色になります。
銅が溶出した溶液は毒性がありますので注意して下さい。
基板の取り出しは、可能な限りエッチング液が付着していない状態で取り出します。
更に小さく切ったティッシュペーパーで基板に残ったエッチング液を拭き取ります。
ティッシュペーパーは使用済みエッチング液に沈めて、まとめて廃液処理を行います。
廃液(使用済みエッチング液)はアルミ箔を溶かすことによって銅を析出させれば、溶液中から銅を除くことが可能です。
アルミが溶ける際に”湯気が上がる程の反応熱”が出ますので、少しずつ様子を見ながらアルミを入れて下さい。
廃液処理のチェックポイントは、このように
●アルミ箔がこれ以上溶けない(飽和状態)
●茶色い銅析出物ができている
●溶液が透明(緑色が消えている)
が確認できればOKです。
コーヒーフィルターなどでアルミや銅析出物などを、ろ過して乾燥させて固形物になったら廃棄可能です。
”何ごみ” になるかは、お住いの自治体のルールに従って下さい。
基板の仕上げ作業
基板に施したラッカー塗装を落とす必要があります。
ラッカー薄め液で拭き取るのが良いのですが、販売規制があって入手困難です。
学生さんが購入容易であることも考慮して色々試した結果、模型用の塗料”Mr.COLOR”のエアブラシ専用うすめ液”Mr.レベリングうすめ液”が良いことが分かりました。
溶剤ですので換気には充分注意して下さい。
Mr.レベリングうすめ液の使用量を最小にして、楽に塗装を落とせて、揮発による問題を減少させる方法
用意するもの
●Mr.レベリングうすめ液
●ラップ
●ティッシュペーパー
①基板を包めるぐらいの大きさにラップを切って、中央に基板を設置する。
②基板の上にティッシュペーパーを置く。
③ティッシュペーパーにMr.レベリングうすめ液を浸み込ませる。
④ラップで包む。
⑤10分程度放置!
⑥ラップのままでティッシュペーパーをずらす(揉む感じで)。
⑦ティッシュペーパーが真っ黒になったら基板を取り出して、付着しているMr.レベリングうすめ液を拭き取って完成。
こんな感じに仕上がります。
参考までに
長らくロボットの機構部品切削と基板切削を”NCフライス MODELA MDX”で行ってきましたが、”CO2レーザー加工機 Beamo”導入から半年間、振り返ればNCフライスを使ったのはラジコンカー用のABS樹脂バンパーを製作した1度きりです。
この間、お手本用のサッカーロボット2台、レスキューラインロボット1台を製作しましたが機構部品・基板の製作はレーザー加工機とドリル(基板の穴あけ)だけでOKでした。
参考例としてサッカーロボットのドリブラユニットです(もちろんレーザー加工機だけで製作可能です、強度充分なモジュール1のギヤを製作可能なのもレーザー加工機の魅力です)。
以下の記事の後半に平板で立体部品を作るノウハウがありますので参考にして下さい。
学校の部活で3D CADを導入するには(ロボカップジュニアに取り組んで居られる指導者の方向け) - 隠居エンジニアのものづくり