基板の製作は、長らくEagleからMODELAへ "ベクターデータ" をエクスポートしてくれるULPと、ローランドDGの文字用カッターを用いて切削していました。
流行りの海外格安基板屋さんに出す事もありますが、発注したのはここ10年間で4回です。
殆ど片面基板でなんとかなるし、なにより設計完了・即日動作確認ができるメリットは絶大です。
とは言え切削で基板を作るには以下の問題があります。
●消耗品費用(ローランドDGの文字用カッターは結構高いです)
●バリによるショート(”10Xルーペ” でやっと見つかるぐらいの小さな髭なのでテスタで短絡チェックをしています)
●騒音(ご近所との騒音トラブルにならない様に稼働時間9:00-21:00ルールを設定してます)
●加工時間(加工線長依存ですが、だいたい1枚当たり3~6時間)
レーザー加工機で基板作成できないか?
銅張積層板を塗装してレーザー加工機で銅箔を露出させてエッチングする方法があるのですが、ベクターデータを出力できないと膨大な加工時間が必要です。
レーザー管の寿命にも関わってきますのでベクターデータで加工できるものは、できるだけベクターデータの作成をしたい所です。
と言うことで、Eagleの設計データをFusion360へ連携させてベクターデータを得られないかと悪戦苦闘!
もっと効率的な方法があるかもしれませんが、見つけた方法について解説します。
※半導体レーザー・CO2レーザーどちらでも基板製作可能です。
※ここではBeam Studio(Beamo専用ツール)のレイヤ機能を利用しています。
レイヤ操作ができないレーザー加工機はDXFファイルの不要レイヤを削除・必要レイヤの統合処理を行って頂ければOKです。
Fusion360へのEagle"PCBファイル"の読み込み
DXFファイルの出力先フォルダの指定を行う箇所がありますので、予めフォルダを用意して下さい。ここでは”CAM_TEST”フォルダにて説明します。
”開く” → ”マイコンピュータから開く”と進んで”EagleのPCBファイル”を選択します。
ファイル選択後、右下の”開く”ボタンをクリックすれば、こんな感じに読み込まれます。
一番上の列に”デザイン”、”ドキュメント”、”ルールDRC/ERC”、”製造”、”自動化”、”ライブラリ”と並んでいる文字の”製造”をクリックします。(ボタンになってませんが文字自体をクリックできます)
製造のプルダウンメニューから”CAMプロセッサ”を選択するとCAM Prosessorが立ち上がります。
赤丸のテキストマークの様な所をクリックするとプルダウンメニューが出ますので
”Templates" → ”Single Layer Defult ”と表示させて、”Single Layer Defult ”をクリックします。
テンプレートが読みだされますが、何も触らずに一番下の"Process Job"をクリックします。
フォルダ指定を行います。
フォルダ指定後に”フォルダーの場所”をクリックすると、あっという間に処理が完了します。
”Open folder”をクリックするとフォルダが開いて、Fusion360側で新しフォルダが作成されています。
このフォルダを”CAMOutputs” → ”DrawingFiles” と開くと”DrawingFiles”フォルダ内に"DXFファイル"が作成されています。
Beam Studio(Beamo専用ツール)への読み出し & 厚紙での試作
DXFファイルを読み込み、全体を選択します。
全体を選択しないとアクティブなレイヤだけが移動するので注意してください。
全体選択の状態です。
水色の四角形が各レイヤの外形を示していますので複数の四角形が表示されていれば全体選択できている目安になります。
ドラック&ドロップで位置決めして、作業しやすい大きさにズームしておきます。
御覧の通りこのまま加工するとすべてのランドが孤立しますのでレイヤ操作でパターン加工できる状態にします。
”16_copper”と"outline"を非表示にするとパターン加工できる状態になります。
※eagle Ver.560にて検証しました。バージョンが違うとレイヤ名が異なるかもしれませんが、表示・非表示を適当に組み合わせてパターン加工できる状態にすればOKです。
”Drills_PTH”のみ表示かつアクティブにして”厚紙0.5mm切断”設定でGO!(加工時間7s)
”ダイソー厚紙A4用8枚入り”を愛用しています。パラメータは以下画面を参考にして下さい。
”1_copper”のみ表示かつアクティブにして"紙"(デフォールト)設定でGO!(加工時間54s)
紙はブロアーの勢いで動いてしまうので外形カットはハサミ(手動)で行います。
製作した試作厚紙で挿入部品の確認を行います。
表面実装部品の確認をします。
レーザー加工機は加工時間がとても短いので、このような試作を行うことに抵抗がなくなります。
試作費用は110円÷8枚×(使用面積/A4)で1円程度ですので、実際の基板を作って失敗するリスクを考えると”試作しない選択肢”は無いと思います。
基板の製作
レーザー加工機用の基板の準備
銅張積層板(片面)に黒色ラッカースプレーで塗装して数日乾燥させます。
ちなみに期限切れになって真っ黒(青?)になった感光基板も使えます。
レーザー加工
基板をセットします。
下図の様に端切れを使用する場合は、ブロアーによるワークのズレを防止する為に加工範囲外をテーピングしておく事をお勧めします。
試作検証済みのDXFファイルを読み込み、試作の時と同じ手順で”全体選択”→”移動”→”ズーム&レイヤ設定”を行います。
”Drills_PTH”のみ表示かつアクティブにして”銅張基板彫刻”設定でGO!(加工時間8s)
パラメータは上の画面を参考にして下さい。ハイパワーで1回よりもローパワー2回の方が良好でした。
続いて、”1_copper”のみ表示かつアクティブにして”銅張基板彫刻”設定でGO!(加工時間1m46s)
こんな感じに仕上がります。
若干薄膜が残りますので歯ブラシ(古い廃棄品でOK)と歯磨き粉(炭酸カルシウムとかの磨き粉が多いものが良い)で磨きます。
銅箔の鏡面反射が確認できれば完成です。
あとはエッチングで銅箔部分を取り除いた後に塗装を剥がせばパターンが出来上がります。