以下の記事を読んで頂いた事を前提にしています。
リチウムイオンバッテリーについて - 隠居エンジニアのものづくり (hatenablog.com)
Li-Poバッテリーの保護回路について - 隠居エンジニアのものづくり (hatenablog.com)
”高性能バッテリーであるLi-Poを使用禁止にするとロボットの性能が低下する。”と言うのがLi-Po使用禁止に反対する人の代表的な言い分です。
恐らく世界と渡り合えなくなると続くのでしょうが・・・
Hi-MHバッテリーが比較対象ならLi-Poの方が劣る認識なので話が噛み合いません。
恐らくこのギャップの犯人は下図からのイメージではないかと思っています。
最近はこの手の似たような図があちこちにありますが、私が最初に見た図は以下の様に時間軸が入っているものでした。
この図も私の見たオリジナルではなく、モバイル端末の待ち受けと2008年の現状が追記された形になっています。
もともと二次電池の将来像を描いたもので、1991年に市場投入されたリチウムイオン二次電池によってニッケル水素電池は1994年頃には開発が終息して性能は頭打ちになり、その後リチウムイオン二次電池の独壇場になると言う流れの図です。
ところが予想は、とある自動車会社のリチウムイオン二次電池車載見送りによって狂ってしまいます。
97年のNi-MH搭載ハイブリット車販売と共に出荷数量は増大し、リチウムイオンが上回る急激な伸びは起きませんでした。
ニッケル水素電池は枯れた技術ではないのです。
今でも開発が行われていて、30C放電可能な大電流型など、リチウムイオン二次電池との特徴差は薄まっています。
更にこの図が罪深いのは理論容量によるプロットである事です。
皆さんが実際に購入可能なホビー用バッテリーの実使用容量でプロットすると下図のようになります。
スペース優先設計ならNi-MH、重量優先設計ならLi-Feを選定するイメージですね。
安全な運用を行う前提においてLi-Poは高性能バッテリーではないことが理解して頂けたのではないでしょうか。
膨れたLi-Poの話を良く聞きますので過放電に至る程、ギリギリを攻めて使っているのだろうと想像しますが、それでもLi-Feと並ぶ程度です。
発火・爆発のリスクを冒してLi-Poを使用するメリットは無いと思いませんか?
腫れたLi-Poの話ついでに
疑問に思うセンスは、ものづくりにとって重要です。
その習慣は日々問題解決スキルを磨いてくれます。
皆さんはスマホを毎日マメに充電していると思います。
ですので年間充電回数は365回と見積もって支障はないでしょう。
このスマホに搭載されているLi-Poバッテリーが1、2年で腫れて使用不可になった事例を身近な人で見たことがありますか?
ズボンの後ろポケットに入れたまま座ったら折れたとか、落としたとか、ペットに甘噛みされたとかの応力が加わった履歴の無い状態では恐らく一件も無いと思います。
では部活もしくは個人で購入したLi-Poの個数全体に対して1、2年で腫れて使用不可になった個数は何個ですか?
年間充電回数は何回ですか?
例えば部活もしくは個人持ちのLi-Poがあって年間充電回数は大会直前と大会中の合計30回と仮定して1個でも腫れた事があるとします。
御自分のスマホが30日目に腫れて使えなくなったらどうでしょうか?
圧倒的に腫れる頻度が高いことに気が付けば、原因を探ると思います。
Li-Poバッテリーは、たった一度の過放電で電池としての性能を失い腫れてしまいます。
過放電保護は必須なのです。
この性質はLi-Feバッテリも同じですので過放電保護は必ず入れましょう!
という事でLi-Feバッテリー用の、とても簡単な過放電保護を紹介します。
アイデアの出処はこちら
リフェバッテリーの電圧チェックについて | 近藤科学 (kondo-robot.com)
①バッテリーの電圧を分圧してマイコンのA/D入力に入れる。
例えばLi-Fe6.6Vを10kΩ2本で分圧してArduinoUNO(A/D入力電圧5V)に繋げます。
満充電時は7Vを超えますが分圧によりA/Dからは3.5V(A/D値:717)となります。
②プログラムで2.9V(A/D値:600)以下になったらモータ出力強制停止&LED高速点灯になる様にする(過放電警告動作)。
過放電警告動作になったら、直ちに電源を切る事をお忘れなく!
出典:
独立行政法人農畜産業振興機構 ナトリウムイオン電池へのしょ糖加熱分解物の利用 図2実用二次電池のエネルギー密度の比較
社団法人電池工業会統計
東芝レビューVol.56No.2(2001)
新たな用途展開を図るニッケル水素電池の新技術
近藤科学株式会社 リフェバッテリーの電圧チェックについて